◆    ◆    ◆





賽の河原の地蔵和讃





 この祭典に参加する資格は唯の二つ・・・
 一つ、アサシンが登場すること
 二つ、アサシンが地蔵を背負っていること
 
 以上
 
 月下に2人の剣士は対峙した。
 セイバーにアサシン。
 剣の技量を競うならば恐らく最高の組み合わせであろう。
 だがアサシンが背負っているには彼の愛刀物干し竿ではない。
 それは仏だった。
 身長18メートル、重さ250トンの。
 
「・・・大仏やんけ」
 
 いきなりNGだ。
「アサシン、それは地蔵ではなく大仏です!!」
 ずもももも・・・と巨大な文化遺産を背負うアサシン。
「ふ、伽藍に囲まれれば大仏だが野に吹きサラされれば地蔵よ」
「詭弁を弄すな!!」
 セイバーにとって地蔵というのはお供えの団子やおはぎを失敬してもニッコリ笑って許してくれるナイスなストーンのゴッドのことだ。
「だいたい大仏はルシャナ仏!地蔵は一切智成如来です!」
 そう一般に地蔵と呼ばれているが、地蔵菩薩本願経に釈迦入滅後、56億7千万年後に弥勒菩薩が出現されるまで、この世には仏がおられないので、仏に替わって衆生を済度されると説かれる一切智成如来という仏である。
 地蔵とは大地の意味で大地が全ての生き物をはぐくむように、母のような徳を表す。
 
「断じてそんな国家権力の象徴みたいなモノではありません!」
「ふ、そんなだから貴様は国に殺されたのだ」
 いきなりしゃしゃりでた金ピカをエクスカリバーで一刀両断。
「正直私も許されるか心配だが事ここに至ってはしかたあるまい」
 大仏を構えるアサシン。
「くっ!!」
 セイバーは正眼の構えを取る。
「燕を切るために編み出した我が秘剣、受けられるか!?」
 裂帛の気合とともにアサシンの大仏が三つの軌跡を描いて走る。
 250トンの質量と圧倒的な表面積がセイバーを襲う!
 だがセイバーは引くでもなく受けるでもなく前に跳んだ。
 わずか0.5メートルの大仏の鼻の下を潜り抜ける!
「っ!?」
「・・・はっ」
 大仏の寸法で最も小さい隙間を彼女は見逃さなかった。
「流石・・・、だが二度目無い」
「・・・アサシン」
「何だ?」
「山門壊れてる」
「・・・・・・」
 18メートルの物体を振り回せば当然の結果であった。
「いい勝負であった・・・」
 アサシンはわずかに片膝を落とし薄れゆく。
「・・・・・・」
「さらばだセイバー」
 消えてゆくアサシン。
 残る大仏。
 そしてそれは転がり落ちていった。
「はわっ!?た、助けてください、シロウーー!!」
 インディ・ジョーンズ状態のセイバー。
 ゴロゴロと転がる大仏。
 
 刹那
 
 背後から地蔵ミサイルが炸裂し大仏は木っ端微塵になる。
「アサシン!!」
「最後くらいは決めんとな」
 そう言って群青の鮮やかな剣士は消え去った。
「アサシン、貴方は最後まで・・・」
 そう最後まで。
「罰当たりな」
 お供えドロボーは嘆息した。
 
「汝ら命短かくて冥土の旅に来るなり娑婆と冥土はほど遠し
我を冥土の父母と思うて明け暮れ頼めよ」
賽の河原地蔵和讃より







後書き
 
へぼへぼなサイト「嘘八百」を運用してる岡崎と申します。
参加資格があるかわかりませんが投稿させて貰いました。
よろしければ参加させて下さい。






Back to Top