ドリーのマジカル☆ハンドパゥワァ
15歳・真夏のコスプレ一週間 〜でもね、手袋とニーソは外せないの





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「クスッ☆ ダメですよ、声出しちゃ」
 言われるがままに口を閉じ、息を潜め、周囲に他の何者の気配もないか繰り返し確認する。
 ……誰も、いない。
 東京封鎖以来、山手線内はかつての不夜が信じられない程に夜が早くなっていた。街も公園も暗闇に包まれ、頼りになるのは月明かりが精々。元より星も満足に見えない空なのだから、それ以上は期待するだけ無駄というものだ。
 だからこんな真夜中に、公園の林の中に好んで入り込んでくるなど、例え浮浪者であってもいるはずはなかった。
「そんなに心配しなくても、大丈夫ですよ? ……大声とか出したりしない限りは。ユズさんもアツロウさんもケイスケも、よく寝てたし」
 リリスよりも余程悪魔めいた笑みを浮かべ、ミドリはゆっくりと見せつけるように自分の身体に指を這わせた。
 股間から、お腹、首、そして……唇。
「だ〜れも、いません。だから……ね? 見せてくださいよぉ。さっきの……続き」
 月明かりに照らされた青白い顔に、赤みが射していた。
 さっきも、周囲には十分注意していたつもりだったのだ。誰もいないだろうと何度も入念に確認し、コトに及んだ。
 ミドリに見られてしまったのは本当にただの偶然で、誤算で、なのにどうしてこんな事になっているのか……
 頭がおかしくなりそうだ。
 悪魔に幻惑されているのだと言われた方がまだマシだった。
「ねぇ、早く見せてくださいよ」
 ねだる声には、過度の興奮が感じ取れた。
「――オチンチン♥」
 淫靡に囁かれ、自慰行為を中断されたままだった哀れな肉棒が股間でビクンと跳ねていた。





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 性欲の発散。
 東京が封鎖されて以来数日間、そんな余裕も時間もなかった。
 性欲なんて気にしている暇があれば封鎖を解くか何とかして逃げ出すかするために必死で、ソコも昂ぶることなくずっと鎮まったままだったのだ。
 原因は、夕食をとった後、せめて靴下などだけでも洗えるなら洗ってしまいたいというユズとミドリの生脚を見るともなく見てしまったことだった。
 別に脚フェチのケなど無かったはずなのに、瑞々しくも汗に汚れた彼女達の艶めかしい肌を改めて意識させられたことで、忘れていた青臭い性欲が不意に甦ってしまったのだ。
 そうなってしまうと彼女達の行動の端々、仕草や微かに香る汗の匂いなど全てが本能を刺激し、追い詰められるかのように耐えられなくなってしまった。切っ掛けがどうあれ、いったん火が点いてしまったならその熱は抜かなければ鎮火しない。
 みんなが寝静まったのを確認し、林の奧でコソコソと。まるで中学生に戻ったかのような気分だった。
 ユズやミドリの肌を、匂いを想像し、硬くそそり勃つ己の分身を必死に扱き、結末の到来に恍惚としていたまさにその時に聞こえてきたのは『キャッ』という小さな悲鳴。
 振り向いた先にいたのは、ミドリだった。
 どうして彼女が起きて今この場にいるのか、答えの出ない疑問に決着をつけるよりも先にまず、恥ずかしさと情けなさで死にたくなった。
 気まずい沈黙は永劫のように長く、けれど実際には極短い時間で結末をむかえた。
『……今の……オナニー、ですよね?』
 夜の闇に、ミドリの眼鏡の奧の瞳が爛々と光り輝いていた。
 怪しい輝きだった。ゾッとするくらい、心を鷲掴みにされたかのように、頷いてしまった。
『アタシ、初めて見ちゃった……男の人の、オナニー』
 ペロリ、と。
 まるで獲物を前に舌なめずりする獣だ。
 ミドリが何を考えているのか読めないまま、次に聞こえてきたのは信じられない要求だった。
『……見せて、くれませんか、ぁ?』
 思わず耳を疑う。
 けれどミドリのとろんと濡れた瞳は、それが嘘でも冗談でもないことを告げていた。
 本気、なのだ。
『見せてくれるなら、誰にも言いません……だから』
 抗うことなど出来ず、ただ無力に頷かざるをえない強制力。
 ミドリがもう一度、唇を舐めるのが見えた。
 底の見えない笑顔に、背筋が凍る気がした。





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「ん〜……おっかしいなぁ。さっきはもっと大きかったですよね、おちんちん」
 半勃ち状態のソレを見つめ、ミドリは不満そうに首を傾げた。
 苛立っているようにも、困惑しているようにも見える。が、どう言われようともこう緊張しすぎた状態では思うように勃起させることなど出来そうもない。
 焦れば焦るほど肉棒は力を失い、萎えつつあった。
「……むぅ、なんでぇ?」
 とは言えこのまま収まってくれたなら、ミドリも諦めてくれるのではないかと淡い期待を抱いた瞬間だった。
「――あ、そっかぁ♪」
 不意にミドリは良いことを思いついたとばかりに胸元に手をあてると、やや躊躇して後、
「えいっ」
「ッ!?」
 一気に、衣装の胸の部分だけをズリ下ろしていた。
「……え、へへぇ♥ ちょっと恥ずかしいけど、男の人って、こうすれば昂奮する……んですよね?」
 プルン、と。
 ユズよりはやや小ぶりながら、二つ年下とは思えない程に豊かに成長した双丘が闇の中に揺れた。
「ユズさんよりは小さいけど、同い年の子達の中じゃアタシもけっこー大きい方なんですよ?」
 闇に慣れた目のおかげで、それは言われるまでもなくわかった。
 一五歳でこれならば充分すぎるだろう。むしろ、もっと大きい子がいるのかと想像し、思わず喉が鳴った。が、それを鋭く察したのかミドリは少々ふて腐れたように頬を膨らませた。
「もぉ〜。ちゃんと見てくれてますか?」
 募る不満がミドリをより大胆にしているのだろう。両腕で胸を挟み込み、ただでさえ大きいそれを強調しながら躙り寄ってくる。
「……それとも、もっと大きくないと、ダメ?」
 そんな事はない、とばかりに、肉棒は徐々に硬さを取り戻しつつあった。ミドリが近付くにつれ、萎えかけて下に垂れつつあった陰茎がやがてまっすぐに、続いて反り返り、天を衝こうとそそり勃っていく。
「ん? ……あっ、大っきくなってきたぁ♥」
 余程に嬉しかったのだろう。
 パァッと眩しい笑顔を見せたミドリはさらに近づき、まだ十割とまではいかないまでも八割方勃起した肉棒をマジマジと見つめ、ゴクリと喉を鳴らしていた。
「……すご、ぉい……男の人の、勃起した……オチンチン」
 紅潮した顔がいやでも目に入る。
 ミドリが肉棒から目を離せないのと同様に、こちらも彼女から目を離すことは出来なかった。
「さっきは、コレを……擦ってたんですよ、ね? ……オナニー」
 見上げてきたミドリに、小さく首肯する。今さら否定したところでどうしようもない。こうなったら、後はもう流れに身を任せるのみだ。
 相変わらずミドリは「うわぁ」だの「へぇ」だの感嘆の声を漏らし続けていた。どうやら余程気になっていたようだ。
「たまにね、ネットの……ブログにですけど」
「……?」
 唐突に何の話かと尋ねるより先にミドリは続けた。
「エッチな書き込みとかも、あったんです。……男の人からぁ、……『ドリーちゃんをオカズにして、毎晩ヌいてます』とか、『ドリーちゃん見てるだけでチンポ勃っちまうお』とか……」
 彼女のような年頃の女の子にとって、それらは嫌悪の対象だったはずだ。が、同時に興味もあったのだろう。
「そういうの見てたら……男の人って、どうやって……その、オナニーするのかなぁ、って。オチンチンの形とかも、同人誌とかで知ってはいたけど……ホンモノは、小さい頃にお父さんのをお風呂で見たくらいで……こんな」
 ゆっくりと、ミドリの手が伸びる。
「こんな風に……なっちゃうなんて……ビックリ♥」
「ッ!!」
 指が、触れていた。
 亀頭に。
 本当に一瞬だけ、指先がサッと撫でただけだった。しかし真夏だというのにコスプレ衣装だからと身につけたままの手袋に覆われた指の感触は自分で触れるのとはまるで違っていて、電流が走ったかのように肉棒は大きく震え、さらに硬く太くそそり勃っていた。
「あっ……今、ビクンッ……って、なりましたよね? 指で触ったら、オチンチン……ビクンッ、て。……わぁ♥」
 頻りに感心し、興味の対象を観察する。
 ミドリはさらに顔を近付け、それこそ息の掛かるくらい間近で剛直を見つめると、何を思ったか先程は触れただけだった手で今度は肉竿を握り締めていた。
「ッ!」
「……ふ、ふふふ? えいっ」
 握る、と言っても力など特に込められてはいない。そもそも加減などまるでわからないのだろう。
「握っちゃった……♥ おちんちん……熱いの……手袋越しにも、震えてるの……わかっちゃう……あっ♥」
 それからミドリは暫く肉棒を握ったまま微動だにせず、静かに淫熱と脈動を感じているかのようだった。
 互いの心臓の鼓動が、深夜の静寂に響く。
 虫の声さえ聞こえない。
 聞こえてくるのは鼓動と、そして……昂ぶった、息遣い。
 激しく、荒くなっていくのがわかり、二人はいつの間にか見つめ合っていた。
 蕩けそうなミドリの瞳は何かを強く訴えかけているようで、けれどそれが何なのかはわからなかった。
 言葉が無いだけで、沈黙とは呼べない時間が流れた。
 やがて先に言葉を取り戻したのは、ミドリだった。
「お礼……ってコトじゃ、ダメ……かなぁ」
 何を言っているのかわからず、眉を顰めるとミドリはクスッと柔らかく微笑んだ。
「アタシ、助けてくれた、お礼……まだ、してなかった……でしょ? ……だからぁ、お礼、ってコトなら、ユズさんも許してくれるかなぁ……なんて」
 どうしてそこでユズの名前が出てくるのかさらに眉を顰め首を傾げると、ミドリは微笑んだまま、ゆっくりと手を上下に動かし始めた。
「わかんないって顔。……ちょっと、ユズさんに同情しちゃうけど」
 やめろ、と言うよりも早く、ミドリは肉棒を段々と強く握り、扱きだしていた。
「ただオナニー見せてもらうだけじゃ、悪いもん。……だから、せめて、ね? こうして……オチンチン、扱くから……んっ」
 手袋の材質はわからなかったが、やたらと滑らかな感触が弱々しく肉竿を扱きあげていくくすぐったさに背筋がゾワゾワとした。しかし、不快ではない。
「……ん、あ……また、大きく……ん、しょ……ふ、ぅ……っ♥」
 肉棒をうっとりと見つめながら、ミドリはとても一五歳には見えない淫蕩な貌で手を動かし続けていた。おっかなびっくり、けれど湧き上がる興味を、好奇心を抑えることなど出来ないとばかりに。
「あ……っ♥ なんか、匂ってきた……これ、オチンチンにニオイ?」
 汗まみれで、数日間洗ってもいなかった肉棒だ。それを擦っていれば匂いが激しくなるのは道理だった。本人の鼻にさえ饐えたアンモニア臭が漂ってくるのだから、極間近で扱いているミドリにはたまったものではないはずだ。
 なのに、ミドリは嫌そうな顔一つせず……それどころか、肉棒を握る力は僅かに増し、速度も上がっていた。
「……ふぅ、んっ……すぅ……ん、はぁ……臭ぁい♥ ……オチンチンって、こんなニオイするんだ……スゴク、臭い……オチンチンの、ニオイ……臭い、よぉ♥」
 文句を言っているよう聞こえるのに、表情は恍惚としたまま、ミドリは鼻を鳴らしさらには余計に近付けて手コキを続けた。
 もはや止める止めないの話ではない。
 想像を絶する快感だった。
 コスプレをした美少女が。
 普段から正義の味方を自称し、混迷を極める封鎖下の東京にあっても健気に人々を救い続けようとしたミドリが、こんなにも淫らに肉棒を扱いているのだ。そう考えただけで股間は跳ね上がり、尻はムズムズと震え、亀頭の先端からは先走りの汁が溢れ出した。





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「これ……精液、ですか? ……ニチャニチャ、する……あ、先走り……って言うのかな? ……キモチ良くなって、くれてるから?」
 先走りをもう片方の手、人差し指と親指で摘むようにニチャニチャと弄くり、ミドリは嬉しいのか照れ臭いのか、へへぇっと笑った。
 数日間溜まりに溜まった精液は先走りだけでも相当なもので、ミドリが指に付着させたものだけでは到底収まりきらず、肉棒を伝い流れたものが扱く指と相まってヌチュヌチュとイヤらしい水音をたてた。
「すっごく……エッチ♥ カウパー……え、と……第一チンポ汁って呼ぶんでしたっけ? よく、わかんないけど……なんだろ。コレ……ヤラしすぎるよぉ……」
 荒くなる一方のミドリの吐息や鼻息が亀頭をくすぐり、それだけで達してしまいそうになるのを必死で堪えた。
 もう限界は迎えつつある。
 けれど、もう射精してしまいたいという解放を求める感情と、勿体ないというこの快感を持続させたい感情が鬩ぎ合っているのだ。
 ミドリの興奮も増しているのか、手の動きはさらに激しくなっていた。しかしまだどこか遠慮している部分があるのか、決定打は無い。そのおかげでかろうじて耐えられているというのが正しく現状だった。
「チンチン……おチンポの先っちょで、おクチ……パクパクってしてる♥ こんなに、エッチだったんだ……男の人のオチンチンって……なんか、ビックリしてばっかり……それに、頭……おかしくなりそ……うっ、はぁ♥」
 ミドリの口の端から、一滴の唾液がこぼれ落ちた。いっそのこと彼女の頭を鷲掴みにしてそこに剛直を突き入れ思い切り蹂躙したいという欲求が鎌首をもたげている。寸前でそれを自制出来ているのは、果たして何故なのか。自分でも、よくはわからなかった。
「もう、イッちゃいそう……です、かぁ?」
 月が雲に隠れてしまったのか、暗くてミドリの表情がよく見えない。
 彼女は、今、どんな貌をしているのだろう。
 声は物惜しげだった。まだまだ続けていたいと、そんな響きを内に含んだ喘ぎにも似た声だった。
 見たい。
 彼女が今、どんな貌をしているのか。
 どんな貌で肉棒を見つめ、扱き、男をイかせようとしているのか。
「震えてる……チンポ、ぉ♥ 震えちゃって……ん、く、……はぁ……臭いニオイ……おチンポのニオイ、また強くなってる……よぉ♥」
 月の光を遮っていた雲が、動いていた。
 手袋に覆われた指が、淫らに肉棒を扱いているのがまず目に入った。自分の手とはまるで違う。小さくて、細くて、綺麗な、指。
 少女の指。
 次いで月光に晒されたのは、妖しげに、淫らに綻びた彼女の貌。
 真夏だというのに凍り付くかと思った。なのに、熱い。身体が火照ってどうしようもなくなりそうだ。迸ろうとする股間の猛りを、止められない。
「あ、あ……おチンポっ……すごっ、膨れて……ふ、あぁああ♥」
 扱く手が速まっていく。
 ミドリの口から止め処なく唾液が滴っていく。
 鈴口からももはや先汁などと呼べない量の淫汁が溢れていた。
「射……精……? これ、射精、するんですよね? ……あっ、チンポのおクチ……あっ、あっ♥ これ、すご……ひぅっ! ひゃっ、ぁあ……っ♥」
 陰茎を駆けのぼっていく。
 精の奔流が、ドクドクと幹を脈動させて。それはミドリの手から全身に伝わり、彼女をも激しく震わせた。
「射精るっ、おチンポからたくさん射精ちゃ……はぁあああっ♥ やっ、ひっ、ひゃうぅぅううううううううッッ♥」
 大量の精液が吐き出されていく。
 まるで火山の噴火のように。
 白いマグマを全身に浴びて、ミドリは陶酔の極みにあった。
「は、あ……あぁん……っ♥ おチンポ、汁……これ……熱ぅ、い……♥」
 白い指が、白濁とした汁を顔に、胸に、太股に、塗りたくっていく。
 脈打つ剛直はまだ萎えることを知らず、ミドリもまた熱に浮かされつつも爛々と輝く瞳を逞しいそこへと真っ直ぐ注いでいた。
「……あっ♥」
 再び、指が剛直に触れる。
 亀頭が一際大きく跳ねた。精液が飛沫となって散る。
「……まだ、おチンポ……元気……ですね♥」
 カリ首を指でなぞり、ミドリはペロリと唇を舐めた。
 夜は、まだ長い。
 月明かりに照らされた少女の顔は、どこまでも妖艶だった。





―了―






絵:寒天示現流




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