冥奴姦落





◆    ◆    ◆





「……どういう、おつもりですの?」
 自身を取り囲んだ浮浪者風の男達を相手に、アイリは一歩も退くことなく毅然とした態度でそう問うた。無精髭まみれの顔に浮かんだ下卑た笑みに不快感が募る。もし自分が死霊でなかったなら確実に吐き気をもよおしていただろうと考え、アイリは顰めていた眉をさらに寄せた。
 女王の都、ガイノス。
 大陸一盛んなこの都にも、当然ながら表と裏の顔がある。
 女王アルドラは敵対者には無慈悲で残虐な暴君であるが、女王領の治世そのものは善政を布いていると言って良い。アイリの目から見たガイノスも、大陸にある他のどの街よりも治安のいき届いた、理想的な都市に見えた。
 しかし仮にも大陸の首都。汚泥を一切含まぬ清流であるはずもなく、ほんの少し目を逸らせばそこにはスラムと呼ばれる下民層の住まう区域もあれば、荒くれ者が我が物顔でのし歩く裏通りも当然の如く存在していた。
 本来ならアイリはそういった場所に近付く用事など無い。常に主の居城を清潔に保つよう邁進している潔癖さを備えたアイリにとって、この掃き溜めは嫌悪の対象でしかなかった。
 なのに、どうして足を踏み入れたのか。
(……ラナのことさえなければ、このような所に……――ッ)
 ふとした縁から現在世話をしている少年の顔が瞼の裏にちらつき、アイリは引き結んだ唇を震わせた。生気に満ち、ふっくらと赤らんだ少年の可愛らしい面差しを思い出すだけで、自分との違いに嘆息してしまう。
 その違いは、生死という絶対的な隔たりだった。
 アイリは、死霊だ。
 現世に存在し続けるには、定期的に生者から精気を摂取する必要がある。
 なのに、ここ数日アイリは精気をまったく補充していなかった。
 その理由こそが、ラナだった。
「へへ、どういうつもりも何も……」
「誘ってきたのはお前さんじゃねぇか。えぇ?」
 馬車に轢き潰された沼ガエルのような声だと、アイリは思った。
 こんな声で現実に引き戻されるなど屈辱以外の何者でもない。
「……耳が穢れますわ」
「あん? 何か言ったか、姉ちゃんよぉ」
 どう見ても知能始め他色々と足りなそうな面をしているわりに、耳だけは良いようだ。鬱陶しげに息を吐き、アイリは踵を返そうとした。それを見て、男が面食らったかのように声をあげる。
「お、おいおい姉ちゃん」
「私が声をかけたのは貴方お一人だったはずですわ。他の方々にお声がけしたつもりは毛頭ございませんので」
 わざわざ口にするのも億劫だったが、アイリは言うだけ言うとそのまま立ち去ろうとした。今の状態では、複数人を相手にするには危険すぎる。
(……存在を維持するだけで精一杯……このままでは、いつ消えてしまうか)
 生身の肉体だったならば、頬を大量の冷や汗が伝っていたことだろう。
 アイリがここを訪れた理由は、極秘裏に精気を摂取するためだった。
 ラナと出会うまでは大っぴらに街の住人やクイーンズブレイド参加闘士から精気を頂戴していたのだが、あの優しい少年はその行為をひどく嫌がるのだ。
 そして、そんな少年に対するアイリの心境とは、
(ラナの嫌がることは、したくない……)
 まさにそれだった。
 とは言えどんなに嫌がられようとも、アイリとしては存在を維持するのに精気の摂取は欠かせないわけで、何とかしてラナの目の届かない場所でコトに及ぶ必要はあった。消えてしまってはそれこそラナの面倒を見る者もいなくなってしまう。
 だからラナが決して立ち入ることの無いような都の裏街にまでやって来て、浮浪者風の男に声をかけたのだ。もう殆ど力を出せない今の状態でも、浮浪者や野盗の一人や二人ならどうにかやり込めて精気だけを奪える自信はあった。
 そうして後は人気のない場所で、精気を吸ってオサラバ……のつもりだったのだが……些か焦りすぎていたのかも知れない。気付けば男の仲間達に囲まれていたのはアイリの方だったというわけだ。
「それでは、ごめんあそばせ」
 男達が呆気にとられているうちに、早々に立ち去らなければならない。
 空を飛ぶ力すら満足に残っていないアイリは、フラつきそうになる身体を必死に叱咤して表通りまで戻ろうとした。
 が、しかし――
「よっとぉ!」
「きゃっ!?」
 いち早く我に返った者か。一人の浮浪者がアイリの前に立ち塞がり、汚い手で肩を鷲掴みにした。
「お、お放しなさい! ……放して!」
「ダメだぜぇ、姉ちゃん。自分から誘っておいて、何もせずに帰っちまおうだなんてよぉ。ちょいと虫が良すぎるんじゃねぇか?」
「で、ですから私は――ヒッ!?」
 理屈でもって御しうる相手でないのは明白だった。粗末なボロキレを巻いただけの股間は、布越しにも滾り、打ち震えているのがよく見えた。
「そ、そうだそうだ!」
「俺達のその気になっちまったコレの始末は、どうつけてくれんだよぉ?」
 何人もの男達が、股間の膨らみを見せつけるようにして迫ってくる。
 アイリの中に、浮浪者達に対する恐怖が芽生えつつあった。
 沼地の魔女に仕える死霊メイドであり、クイーンズブレイド参加闘士の中でも上位に食い込めるだけの実力を持つアイリにとって、彼ら浮浪者など十が百人いようとも話にならない雑魚のはずだった。
 恐怖など覚える相手ではない。恐怖を覚えるなど、恥だ。
 なのに、
「キャァアアアアアッ!!」
 薄汚れた手で強引に胸元を引っ張られ、ブラごと服を剥ぎ取られた瞬間、アイリは明らかに恐怖による悲鳴をあげていた。
 戦闘中に闘士があげる悲鳴ではない。
 か弱い、一人の女の悲鳴だ。
 メイド服の束縛から解き放たれたアイリの豊満な乳房が、ぷるんと勢いよく震えた。その光景に男達が息を呑む。
「へ、へへ……すげぇ乳だ」
「た、たまんねぇなぁ……久しぶりの女が、こんな極上のおっぱいしたメイドの姉ちゃんだなんてよぉ」
 久しぶり、という言葉はどの浮浪者にも当てはまるものだったのだろう。
 ぎらつく眼は、前戯など無しに今すぐにでもアイリを犯したくてたまらないのだという彼らのひりつくような欲望を訴えかけてくる。
「ひゃんっ!?」
 一人の男の指先がアイリの桜色の突起をグリグリと弄り回し、さらに抓りあげた。
「痛っ! な、何をするんですの!? 汚らしい浮浪者風情が、乱暴な。今すぐにその手をどけ――……やっ、ひぃッ!」
「うるせぇよ、ねえちゃぁん?」
 この期に及んで生意気なメイド娘に対し、浮浪者達は無慈悲だった。もはや囚われの身に自由どころか、好き勝手な口をきく権利さえも無いのだと思い知らせるかの如くに乱暴に乳を鷲掴みにし、揉みしだく。
「やっ、痛い! お、おやめなさ……いぎぃイイッ!?」
「へへ、なぁにがおやめなさいーだ、あぁん?」
「なに、って……はぅうっ!」
 力任せの、決して愛撫とはとても呼べないただの暴力。
 アイリの白桃が次第に痛々しい赤へと染まり、目尻には涙が浮かぶ。
「ひぁあっ!? あっ、い、いぁあああっ、や、やめ……ヒィッ!?」
 男の手によってアイリの乳房が変幻自在に形を変える。
 彼らにとっては久しぶりに触れる、女の肌。それもくたびれた商売女のものではなく、極上の美女の柔肌なのだ。加虐心は次第に純粋な欲望、興奮へと変わっていき、乳房を揉む手もただ乱暴なだけでなく、女の柔肉を心から楽しもう、味わい尽くそうという執拗なものへと変わっていった。
 しかし、アイリにとっては依然として苦痛でしかない。
「はぁあっ、ああっ、や、やめ、て……ん、あっ! い、今のうちにやめないと、あ、あなた、たち……冗談では――ひゃぐぅううっ!?」
 複数の手が、四方からアイリの胸を揉み、その感触に酔いしれていた。苦痛に耐えながら懸命に叫ぶメイドの声など彼らの耳には届かない。むしろ、ただの喘ぎ声へと変換されたそれは浮浪者達を一層昂ぶらせてさえいた。
「ゆ、許さ……、許し、ません……わっ、ん、は、がぁふぅううっ!? ……こ、このような真似……け、決して……私は……きひぁあああっ!」
 許さない、のではなく、もはや許しを請うのはアイリの方だった。
 けれど沼地の魔女の腹心としての、一人の闘士としての矜持がある限り、浮浪者達に泣いて許しを請うような真似をアイリがするはずもない。
 屈辱と羞恥に頬を染め、殺意を込めた視線で男達を睨み据えながら、アイリは何とかこの場から脱出せんと藻掻いた。
「くっ、……ふ、あ……あぁっ」
 悲しいくらいに力が出ない。
 大鎌を振るい、並み居る強敵を討ち倒してきたアイリの腕は今は見た目通りあまりにもか弱く、男達を胸から引き剥がすことが出来ない。その無念さに冥土へ誘うものは声を詰まらせ、噎び泣いた。
 ならせめてもの抵抗の証として悲鳴くらいはあげずに耐え抜いてやろうという、あまりにも健気な決意だった。
 その決意を、
「へへ、なんでぇ我慢してるのかい?」
「もっと声出してくれよぉ姉ちゃん」
「そうだぜぇ? おらっ」
 男達は容赦なく打ち砕く。
「――ッ、〜〜〜〜〜!?」
 メイド服のスカートが乱暴に掴み上げられ、捲られていた。
 アイリの純白のパンティがあらわにされ、男達の眼がさらに凶悪な光を灯す。
「へ、へへ……可愛いパンツだなぁ」
「おっぱいもデケェが、尻の方もなかなかどうして」
 飢えた男達の獰猛な息遣いが、アイリにさらなる恐怖を与えた。
 これから何が起こるのか、何をされるのかは、容易に想像がつく。
(こんな……男達に、私は……)
 横一文字に引き結んでいた唇が、途端にワナワナと震え出していた。
 嫌だ。
 絶対に、嫌だ。
 確かに誘ったのは自分だ。男を騙し、精気だけを吸収するつもりでいた。ならばこれは悪因悪果と言っても差し支えないことで、勝者のみが全てを手に入れることが出来るというこの大陸における絶対の法にもかなっている、はずだった。
 けれど嫌なのだ。
 その理由に、アイリはこの切羽詰まった状況で気付かされていた。
 何て事は無い、至極簡単な理由だ。
(こいつらなんかに――ラナ以外の相手に!)
 悔しくて、悲しくて、涙が止まらなくなる。
 泣きながら、アイリは力無い抵抗を続けた。その健気な姿を目にし、男達の口端が三日月の形に大きく歪み、釣り上げられる。
「へっへっへ……メイドさんのマンコと、ケツ穴かぁ」
「い〜〜〜い匂いがするなぁ。俺らのクソ臭ぇ尻とは大違いだぜ」
「まったくだぁ。ひゃっはっはっはっは!」
 哄笑が響く。
 人間とは、かくも醜悪になれるものなのだろうか。
 死霊として気の遠くなるくらい長い年月を過ごしてきたアイリの想像すら絶する下衆ぶりは、もはや見事と言うほか無い。
「へ、へへ。そらそら、どうだい姉ちゃんよぉ?」
「ッ、……ンン! ンッ、ん、〜〜〜……!」
 懸命に耐えているアイリの秘裂を、男はさも愉快そうにパンティの生地ごとスリスリと擦りあげた。真っ直ぐに伸ばした指の腹で擦ってみたかと思えば、次の瞬間には鈎字に曲げて引っ掻き、アイリを責め立てる。
「! ッ、……ぁ……ぐ、むぅ……〜〜〜うっ! ……ぃ、……ん!」
 アイリがどんなに頑なに耐えようとも、無駄だった。
 肉体の反応は、それがたとえ死霊であっても受肉してある以上は止めようがない。秘所に刺激があれば、どうしようもなく性的な快感として受け止めてしまうのだ。
 アイリの精神力は並ならぬものだった。
 それでも、ダムは小さな亀裂が走っただけで決壊してしまう。
 男達は、今まさにアイリの精神へと亀裂を走らせるために彼女の肢体をまさぐっていた。ゆっくりなんてしていられない。時間をかけるつもりなど無いのだ。
「頑張って、我慢してるなぁ。偉いねぇ姉ちゃん」
「まっ、偉いよりもエロいけどな!」
「違ぇねぇや! ひっはっはっはっは!」
 くだらない洒落に浮浪者達は大声で笑い合っていた。
 殺意が湧く。
 残る全ての力を振り絞って、殺してやりたい。差し違えてでも。
 悲壮な決意を固め、アイリは右手に鎌を現出させようとした。
 ――が、
「んひぃいいぁあああああああッ!?」
 全ての意思、思考を強制的に中断させられた。
 目の前が真っ白になる。身体のどこがおかしいのか認識しようとしても、わからない。ただ全身が痺れていた。電撃でも喰らったかのように。
(こ、この……感触、は……っ)
 身体の中に、異物感がある。
 一瞬、アイリは早くも男の逸物を挿入されたのかと錯覚した。
 しかし、違っていた。
「……かっ、は……く、ぅ……?」
 ソレは、男根よりは大分と細く、短かった。
 野太い、節くれ立った右手の人差し指。
「ヒヒ……なんだい、そんなに効いたのかい?」
 まるで芋虫のようなそれが、パンティの生地ごと第二関節の辺りまでアイリの膣穴にズップリと入り込んでいた。
「う、あっ……な、なんて、ことを……ッ、ひきぅうっ!?」
 膣穴の中で指がクイクイッと何度も曲げられた。体内を掻き回すかのような動きに、耐えきれずアイリの口から悲鳴があがる。
「あっ、あぁああっ! お、おやめに……くひっ! おやめに、なってぇ……」
 蚊の鳴くような己の声に、アイリは慄然とした。
 なんて弱々しい声なのだろう。精気が不足しているとは言え、こんな汚らわしい、下賤な男共にいいように身体を弄ばれて……その挙げ句にこのような無様、もし自分が生きていたなら舌を噛み切っていたかも知れない。
 しかし、残念ながらアイリは死霊だった。
 受肉した身体は損傷を受けもするが、生憎と舌を噛み切った程度ではなかなか死ねるものでもない。今の状態ならば或いは、とも考えたが――ラナのことを想えば、安易に消滅することだけは避けたかった。
(ラナ……ラナぁ!)
「うっ、グス……ヒック」
 堪えていたものが溢れ出す。
 涙は流しても、こんな風に泣き声をあげたくはなかった。
 ぐずり、しゃくり上げながら、アイリは嫌々と身を捩った。
「なんだぁ、姉ちゃん急に弱々しくなったと思ったら、泣き出しちまったぜぇ?」
「俺っちの指チンポでマン肉ほじられて感じちまったのかい? ヒヒヒ!」
 そんなわけはない。
 そんなわけは、ない……のに。
「ひぐっ!?」
 男の指がさらに激しくアイリの膣穴を掻き回す。
 そこに淫猥な水音が混じるまでは、そう時間はかからなかった。
「へへ……グチュグチュって音がし始めたぜぇ姉ちゃん」
「スケベ汁でマンコがいっぱいに濡れてきた音だよなぁ、コレは」
「ち、ちが……あぁっ!」
 否定すら許されない。
「なんだぁ、なぁにを言おうとしたんだぁ? オメェら、聞こえた?」
「さぁなぁ。俺の耳に聞こえるのは、トロットロのマンコを掻き混ぜられてるエロい音だけだぜぇ?」
「ついでに、メイドの姉ちゃんのドスケベぇな喘ぎ声くらいだな」
 男達の下卑た笑い声が頭の中に反響し、アイリは眩暈がした。
 精気不足の肉体は気怠く、なのに弱り切っているためなのか妙に過敏になっているのは否定出来なかった。
 きっと、そのせいなのだ。
 愛撫ですらない男の指の動きに愛液が分泌されてしまっているのは、消滅寸前の肉体が少しでもダメージを減らそうとしている防衛機能に過ぎないのだとアイリは懸命に己に言い聞かせた。
「ほ〜らほら、感じてるんじゃねぇのかぁ?」
「や、あっ! ……ち、がいます……わ……はぐっ! ひ、……ぅ……わ、わたくしは決して……感じて、など……ふぁああっ」
「なんだぁ、感じてねぇって言うのかい?」
 膣道を浅く激しくほじる指には一欠片の容赦も無い。アイリの中の女の――雌の部分を否応無く刺激し、その抽挿によって秘裂から湧き出した夥しい量の愛液がパンティをイヤらしく湿らせていく。
「こんなに濡らしておきながら……んなこたぁねぇよなぁ?」
「ち、が……ちがい、ます……ぅ、……ちがうの、です……ふぁっ、わぁ……あぁああ、やぁあああっ」
 もはや逃れようとすることさえ不可能だった。
 身を捩り、藻掻こうとして、……動けない。身体の自由が利かない。抵抗など以ての外、微かな蠢動が関の山だった。それに、下手に動くと――
「はぁあああんっ!?」
 男の指が余計に、秘肉へと喰い込むのだ。
 並の女ならとうに諦念に囚われ、官能に沈んでいるところだろう。
 それでもアイリはラナを想い、耐えようとした。少年の笑顔が胸にある限り、耐えられるはずだと必死に己を鼓舞した。
「さて、……こっちも忘れちゃならねぇよ、な」
「ひぎぃいっ!?」
 今まで秘所へとばかり集中していた男達だったが、他がお留守になっていたのを思い出したのか再びアイリの胸を揉みしだく。
「や、ぁああんっ! はっ、……あ、……ふ、ぁああああっ!」
 粗暴な動き。
 なのに秘裂を滅茶苦茶に掻き回され、性的に敏感になっていた肉体はどうしようもなく反応してしまう。大きく、硬く、乳首が凝っていくのを自覚しながらもアイリにはどうする事も出来なかった。
「あっ、はぁあっ、ひぃい!」
「おいおい、小っちゃくて可愛い乳首だと思ってたら……さっきよりもすんげぇでかくなってきたぞ姉ちゃんよぉ」
「おほっ、ホントだぜ。こりゃチンポと同じだな!」
「ぶ、侮辱は……許しませ……んヒィイイイッ!?」
 男達の指が、勃起した乳首を押し潰さんばかりに抓みながら扱く。その度に身体に電流が走り、アイリは口の端から涎を垂らしながら頭を振った。
 ツインテールが儚げに揺れる。
「オラ、チンポ乳首キモチ良いんだろぉ?」
「マン肉ほぐされながら乳首おっ勃ててよぉ。なんてエロいメイドだよ」
「ちがっ、わたく、し……ひゃんっ! そ、そんな、女では……あひぃ、あぁ!」
 頭がおかしくなりそうだった。
 思い浮かべていたラナの笑顔が、ぶれる。
 チカチカと目の奧で火花が散り、全身の粘膜から淫汁が滲み出すかのような感覚にアイリは恐怖した。
 このままでは、危険だ。本能がそう告げている。
「も、もぉ……ほん、とに……や、めぇ……いひぁアアッ!?」
 狂ってしまう。
 このままでは自分は確実におかしくなる。
 精神論で耐えられる限界を察知したアイリは、男達の手から逃れようと最後の抵抗を開始した。まるで力の入っていない足掻き。捕食者に捕らえられた哀れな獲物の抵抗が、蹂躙される。
「ふむぅうううっ!?」
 一人の男が、アイリの頭をがっしと捉えてその唇へと吸い付いていた。
「ふむっ、ふぐむぅうううううっ!?」
(ラナ! ラナラナラナラナぁああああああッ!!)
 涙が止まらなくなる。
 涙で滲んだ目に、ラナの笑顔が映らない。
 ラナの笑顔が大きくぶれ、歪み、替わりに薄汚い男の顔が映る。
「ふぐぅ! むっ、んちゅ、ぶふぅ、ふぅううううううっ!!」
 ナメクジを口の中に突っ込まれているかのようだった。
 巨大なナメクジが口内を這いずり回り、舌に絡み付いてくる。
 気持ちが悪い。吐き気がする。消えてしまいたい。
 漆黒の感情に揺れながら、アイリは口内の異物を押し出そうとした。
「ふぶ! むぅ、ふぶぐぅううううう!!」
「んぢゅっ、ぶ、ちゅじゅ、じゅるる……む、ぶふふぅ」
 その舌の動きに、男が口付けながらニンマリと微笑む。押し出そうとしていたアイリの舌は先程よりも執拗に絡み取られ、嬲りものにされた。
「ふむぅ! むっ、んぶ、はぶぁあっ、ぐぅううう!?」
 もう、駄目だ。
 浮浪者の唾液が喉を流れ落ちていく段となり、アイリの絶望は彼女の心身を完膚無きまでに打ちのめしていた。
 臭い。
 口の中で直接息づく男の呼吸。
 アイリの小さく可愛らしい鼻に先程からぶつかっている、男の豚鼻から漏れるこの世のものとも思えぬ臭気。冥界にだってこんな腐臭はあるものか。
 鼻腔がツンとなり、光を失った両眼からボロボロと涙をこぼすアイリがようやく口吻から解放されたのは、その直後のことだった。
「……ぅ……あ……」
 口の周りを唾液でべとべとに汚し、アイリは小さく唇を震わせた。
 心は完全にひび割れていた。
 ラナの笑顔も、消えかけていた。
「……あ……うぅ……」
「へへ、なんだよもうへばっちまったのかぁ?」
「こんなんじゃまだまだだぜ。だいたい、自分ばっかキモチ良くなって――」
「……ッ、あ……ひぅ……ッ!」
 グイッと、肩を押されてアイリは前方へとつんのめった。
 膝を突き、四つん這いに近い状態にされたその目の前にあるのが何か、狂いかけた思考がそれでも嫌悪を顕わにする。
「い……やぁ」
 男達の身体から発せられる悪臭の中でも、そこの匂いがもっとも酷かった。
「ほら……姉ちゃんがエロいせいで、こんなんなっちまってんだぜぇ?」
 噎せ返るような、男性器の匂い。
 いったいいつの間に脱ぎ捨てたものか、浮浪者達は皆下腹部を露出させ、アイリの乳首など本当に可愛らしく思えるくらいに禍々しく勃起した剛直を滾らせていた。
「い、いや……ぁ」
 怖い。
 まるで、魔物だ。
 冥界に住まう化物をすら凌駕する、怪物の群れ。アイリの目には、彼らの肉棒はそのように映っていた。溢れんばかりの獣欲を漲らせたソレがアイリに何をさせようとしているのか、想像しただけで背筋が凍った。
「ほぉら、姉ちゃん。どうだい?」
「ひっ」
 アイリの頬に垢まみれの亀頭を擦りつけながら、男はキモチ良さそうに笑った。
 腐った海産物の匂いだ。吐き出すものなど何も無いはずの死霊にさえ吐き気を催させる強烈な悪臭に、アイリは嗚咽した。
「クックク。そんなに俺達のチンポを気に入ってくれたんなら、何よりだぜ」
「だ、誰が……そんな……うっ、あ……やぁっ」
 さらに無数の剛直が、肌を、髪を撫でた。
 ゆっくりと、アイリの全身を味わい尽くすかのように……アイリの全身に匂いを染み込ませるかのように、肉棒が這いずっていく。
「へ、へへ……こうしてるだけで、イッちまいそうだぜぇ」
「ホントになぁ……姉ちゃんの肌ぁ、スベスベで……たまんねぇや」
「髪だってスゲェよ。チンポに巻き付けて扱くと……おっ、ほぉお……ッ」
 鈴口がパクパクと開き、先走りの汁がアイリの全身を汚していく。まるで本当にナメクジでも這った跡のようだ。
「やめ……もぉ、……い、やぁ……」
 どんなに嫌がろうとも男達がやめるはずもなかった。
 やめるどころか、より強い快感を求めて擦りつける勢いが増していく。数日や数週間ではなく、おそらくは数ヶ月や数年単位で洗われていないのであろう肉棒からはアイリの肌との摩擦によって大量の恥垢がボロボロと取れていった。
「へ、へぇ……ただ擦りつけてるだけじゃ、辛抱たまらなくなってきたぜ」
 そう言って、一人の男がアイリの乳房を鷲掴みにし、グッと股間へと手繰り寄せた。何をさせるつもりなのか、考えるまでもない。
「は、ひゃ……ひゃ、めぇ……いっ」
「はは……メイドパイズリだぜ」
 はち切れんばかりに勃起した剛直を乳房で挟み、扱く。
「や、ぁ……は、ぅ……う」
 灼熱の鉄棒を胸の間に突っ込まれたかのような感覚だった。
 死霊の冷たい肌が、肉棒の熱に焼かれていく。嫌悪感と同時に湧き上がってくるその熱さがたまらなく不安で、アイリは男から離れようとした。が、全身をほぼ拘束されているに等しい現状ではままならない。
「お、おお……まったく、肌に擦りつけるだけとは全然違うぜぇ、この乳マンコ」
「そ、そんなにスゲェのかよぉ」
「早く替わってくれよ! お、俺もメイド乳マンコでチンポ扱きてぇよ!」
 我も我もとアイリの乳房に殺到しようとする浮浪者達の姿は滑稽だった。しかし今のアイリには彼らを嘲笑う余裕は無い。胸の谷間を抽挿する熱に意識を持って行かれないようにするだけで精一杯だった。
「……は、ぁ……はぁ……ンッ、……く、……ぁ……はぁ」
「クク……息、荒いぜ、姉ちゃん」
「ッ! ……そ、その、ようなこと……ありません、わ……ッ」
 熱い。
 胸が熱い。火傷しそう、なのではなく事実火傷していた。少なくとも、アイリの肉体も精神もそう認識していた。
「わた、くしは……はっ、ひゃぅうんっ!」
「へへ、声が上擦ってきてるぜぇ」
 乳首を抓り上げながら、男は腰の動きを速めていた。
 豊満な乳房を『乳マンコ』という下品な言葉通り膣道に見立て、男の情け容赦ない抽挿は続く。そうして胸を突かれるたびに、アイリの火傷も重くなっていく。
 ……焼けているのは、果たしてどこなのだろう。
「ひぁあ、……っ、あああ、……ぁああんっ」
 悲鳴が甘くなっていくのを、認めたくはなかった。
 顔を背けたいのに、谷間から飛び出してくる亀頭から目を逸らせない。
 匂いなんて嗅ぎたくもないのに、鼻腔はピクピクと震え、悪臭を吸い込む。
(変……変ですわ、私……どうして、このような……)
 乳房を弄られ、秘所を嬲られ、全身を汚されて。
 湧いているのは殺意のはずだ。浮浪者達を一人残らず皆殺しにしたいという冷たい感情だったはずなのに……どうして、何故、こんなにも――
(熱いん……ですの?)
「はぁあああああああっ♥」
 今までの悲鳴とまるで異なるそれに、もっとも驚いていたのはアイリ自身だった。
(わ、私……今、何を……!?)
「クックク。ついにそんなエロい声ぇ出すようになったか」
「ち、違いますわ! 今のは、何かの間違いで……――」
 いつの間にか声が力を取り戻していた。それは決して退けない、最後の一線を守るための力なのだと信じてアイリは懸命に先程の嬌声を否定しようとした。
 なのに、
「……う、……は、ぁ……♥」
 谷間から突き出た肉棒が脈打つ姿に、目を奪われる。
 赤黒い亀頭、エラの張ったカリ首に、こびり付いた白い滓。いざマジマジと見ると、裏筋のあたりには白いブツブツも見える。浮き出た血管は青く、その不可思議な造型にアイリは思わずゴクリと喉を鳴らしていた。
「欲しくなってきたんだろう?」
「……な、にを……」
「いいんだよ、我慢すんねぇ。オッパイとマンコをグッチョングッチョンに弄られまくって、そっから今度は俺達のくっせぇチンポの匂いを嗅がされて、全身に擦りつけられてよぉ。……感じちまうのも、仕方のないことなんだぜぇ?」
 仕方のないこと、という言葉には、奇妙な力が宿っていた。
 頷きたくなってしまったのを打ち消し、アイリは下唇を噛んだ。その痛みで正気に戻ろうと、血が出るくらいに強く。
 けれど、死霊の身体は血を流してはくれなかった。
「……あっ、……はぁ♥」
 血の替わりに、秘裂から愛液が流れた。目尻からは涙が流れた。
 その涙の意味が、変わってきている。
(違う……違いますわ。そんなの、ありえません……私は、絶対に……!)
「なぁ、姉ちゃん」
「……は、ぇ?」
 今までアイリの乳房を弄くり回していた男の手が、放れていた。それだけでなく他の男達もアイリの身体に擦りつけていた肉棒を離している。
 奇妙なむず痒さに、アイリは顔を顰めた。
「自分に正直になろうぜぇ? なぁ、おい」
 男が喋るたびに屹立した剛直が震え、アイリの視線を釘付けにした。
 周囲を見回せば、四方を肉棒に囲まれている。その一本一本が魔物の鎌首に見え、アイリは戦慄していた。戦慄すると同時に、胸が高鳴った。
(う、そ……私……そんな……)
「欲しいんだろう?」
「ッ!?」
 野太い男の声が、甘い囁きとなって鼓膜に響いた。
 そのまま頭の中を駆け巡り、脳を蕩かす。死霊の冷たい身体が、微熱に浮かされていく。
 欲しい?
 何が欲しいというのだろう。
 自由か?
 今すぐここから解放され、ラナの元へ帰ることを望んでいるのか。
「……ふ、ぅ……あっ♥」
 答えは、否だった。
「へへ。……さぁ、姉ちゃん」
 怒張した肉棒が、ビクンビクンと雄々しく脈動している。
「正直に、言ってみなよ」
 それはまさしく雄そのものだった。
「何が、欲しいのかをよぉ」
 そして、アイリは――
「……わ、私は……」
(ラナ……ラナぁ)
 どんなに否定しようとも、
「私が、欲しい、のは……っ」
(ラナが……ラナ、ですのにぃ……)
 どうしようもなく、
「……っお」
(……ごめん、なさい)
 雌――
「お、ちんぽぉ♥」
(……ラ、ナ……)
 ――だった。





 後ろにいた男はアイリの言葉を聞くなり即座に腰を掴み、素早くパンティを脱がせると、限界まで勃起した男根を濡れた膣口に突き挿入れていた。
「あっ、ひぁあああああああああああッ♥」
 絶頂に、アイリのツインテールが乱れて宙を舞う。
 今まで耐えてきたもの、堪えていたもの、守ろうとしていた全てがその一突きで粉々に砕け散り、アイリは何度も何度も全身を波打たせ、快楽に打ち震えた。官能の波が堰を切ったかのように押し寄せ、残っていた理性を押し流していく。
「おっ、おっ、おお……」
 膣襞が蠢き、男は思わず気をやってしまいそうになっていた。
「な、なんてぇマンコだよ、姉ちゃん」
「あっ、う……は、ぁ♥」
 切なげに睫毛を揺らし、アイリは恨みがましい視線を向けた。
「い、きなり……おちんぽ、オクまで……い、れられ、たらぁ……は、ぅう」
「ったく、まさか挿入れただけでイッちまうとはなぁ……」
「ら、らって……そ、んなぁ……は、ひぃ……」





◆    ◆    ◆
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 息も絶え絶えに答えようとするアイリを見つめ、男の口元が歪む。
 しょうがねぇなぁと苦笑いを浮かべ、男は痙攣するアイリの膣内を暫しじっくりと味わっていたかと思うと、
「……フンッ!」
「ひひぃいぃいぎひゃぁああっ!?」
 やおら、凄まじい勢いでピストンを開始した。
 男の方も今までずっと我慢してきたのだ。なのに、挿入しただけで済まされるわけがない。アイリの身体を貫くかのように、力の限りに腰を振るう。
「あひゃひっ!? そ、そんな……す、すごすぎ、ますわぁ♥ お、おちんぽがぁ、わたくしを、わたくしのナカ、ゴリゴリって……んひぃいいいっ♥」
 そのまま腹を突き破られそうな激烈な抽挿だった。
 目を白黒させて喘ぎながら、アイリは胸に挟んだ剛直への奉仕も忘れない。メイドなのだから、奉仕はお手の物だ。
「ど、どう、ですかぁ? ……ンッ♥ わ、わたくしの、胸は……き、キモチ、よろしい、ですかぁ?」
「胸、じゃねぇだろ」
「あっ! は、はひぃ♥ ……わ、たくしのぉ……お乳、まんこぉ♥ ……感じて、いただけてぇ……おります、かぁ? ……あっ♥ は、ぁああんっ♥」
 これが答えだ、と言わんばかりに剛直が胸の谷間を突き割る。
 飛び出してきた亀頭へと舌を這わせ、アイリは懸命に奉仕を続けた。
「んチュッ♥ は、むぅ……♥ 美味しい、……ですわぁ……この、おチンポぉ♥ どうして、こんなに美味しいのか……あっ、んひ、おぉほおおおおおお♥」
「へへ、そりゃあもう何年も洗わずに熟成させてきた極上のチンポ様だからなぁ。そこいらのたぁモノが違うぜぇ」
 熟成、という言葉にアイリは納得して頷いた。
 初めはあんなに嫌だった匂いも、今ではこんなに芳しく感じる。苦く、しょっぱいとしか思えなかった味も、コクと深みのあるもののように感じられていた。
「あは、あぁあっ♥ くっさいおチンポぉ♥ この匂いが、たまらないのですわぁ……わたくし、ん、スゥ……ふぁはぁああ〜〜〜っ♥ このおチンポの匂いと、……ん、はむっ♥ チュパッ、んちゅ、ジュプ……ペロッ♥ ……味、だけで……たまらない、ですのよぉ♥」
「へへ、そうかそうか。じゃあもっとタップリ、そのエロ乳マンコでご奉仕してもらわねぇとなぁ」
「はいっ、はいィイイ♥ お乳マンコ奉仕ぃ♥ もっと、もっろ……――はひっ!?」
 胸での奉仕に夢中になりかけていたところを、突然の刺激にアイリは後ろを顧みていた。お尻がムズムズする。それもそのはずで、膣内に挿入中だった男が腰を動きを緩めることなく、今度はアイリの尻穴へと指を突っ込んでいた。
「お、おひりぃいいっ♥ おひり、ほじほじされへ……は、はひゃぁああ♥」
「おいおい、なんでぇお前さん、ケツ穴も弱かったのかぁ?」
「は、はひぃいい♥ おひり、弱いんれふぅ、わぁあッ、ふぁああ! お、おぉお……はわ、ぬひぃいいいいいイイイッ♥」
 アイリの背が、跳ねる。
 仰け反りそうになるのを、胸から肉棒を逃したくない一心でアイリは堪えた。
 その間も尻穴に挿入された指は直腸内を探るかのようにグリグリと動き回り、アイリの快楽中枢に電流を流し込んでくる。
「はは、いいねぇ姉ちゃんよぉ。ケツ穴ちーっとほじっただけで、マンコの締めつけもキュンキュンってよぉ。こりゃ……大したモンだぜ」
「は、はひぃ♥ し、しめつけまふぅ……おまんこのおチンポもぉ、お乳まんこのチンポもきもひよくしまふ、からぁ……はぁあっ♥ あ、ぅうう……ヒゥッ!?」
 尻穴を掻き回していた指が急激に引き抜かれ、アイリはその喪失感に目を剥いた。さらにそれだけにとどまらず、膣内から剛直が引き抜かれていく。
「あ……あんッ! ……はっ♥ あっ♥ あぁ……っ、な、なん、でですのぉ?」
 切なげな声が漏れる。
 背後を顧みたアイリに、男はなんとも優しげに微笑みかけていた。その笑みに釣られるようにしてアイリもまた相貌を崩しかけた瞬間、
「……オラ!!」
「イッ!? ぎヒィおおぉおおおおおおおおおおオオオッ!!?」
 内臓を直接ぶん殴られたような衝撃が走り、アイリは白目を剥いた。
「は、が……かぁ、……はっ、きゅ……ふ、ぅ……ぁ……?」
 痛みを痛みと認識するまでに数秒を要した。
 さらにその痛みの中に、苦痛以外の感覚があると気付くのに数秒。
 だが、アイリが認識し終えるよりも先に、男は動きを再開していた。
「はっははぁ! どうだ、えぇメイドの姉ちゃんよぉ!?」
「はヒッ、い、ひゃ……な、こ、これ……あっ♥ いひィイッ♥ ぬひ、おほぉおお♥」
 指一本でもきつかった尻穴が、いっぱいに拡げられていた。
 今度は指どころではない。男の剛直が突き挿入れられ、信じられないことに直腸を犯されているのだ。
「し、締めつけやがるぜぇこのケツマンコはよぉ……おおおっ!」
「ぬひぃいいいっ!? あっ、はぁああンッ♥ お、お尻に、なんてぇ……そ、そんなの、おぉおおお♥ お、お尻の穴ぁ♥ おケツマンコぉ、おチンポでずぷずぷってぇ犯されてしまっていますわぁ♥」
 腸内で陰茎と腸内粘膜が擦り合わされるたび、アイリの身体が痙攣した。絶頂が収まらないのだ。直腸内からは腸汁が滲み出て、接合部を伝い太股を流れ落ちていく。それを恥ずかしいだなんて、今のアイリは欠片も感じなかった。
「あやぁああっ♥ チンポッ♥ ちんぽぉお♥ はむっ、ン、……ふ、あぁああ♥ ケツマンコとぉ、乳マンコ犯されてぇ♥ こ、これぇ、ダメですわぁ……はぁアンッ♥ わたく、しぃ、感じすぎて、しま、っへぇ……あっ♥ ひはぁああああっ♥」
 腰と尻の打ち合う乾いた音がパンッパンッと響き合う。
 その一方で、腸内を蹂躙する音はヌチュヌチュと粘着質な音をたて、アイリは淫猥な音色に酔いしれた。肉と肉、粘膜と粘膜のぶつかり合う音がこんなにも心地よいものだったなんて、まるで知らなかった。
 未知の感覚が、想像を絶する快楽が、冥土へ誘うものを破壊する。
「やぁっ、はっ♥ アンッ! お、お尻ぃ、いっぱいに……ん、ぁあ♥ なって、しまってますわぁ♥ こん、な……こんな、コトってぇ♥ おちんぽで、おケツまんこ犯されるのが、こんなに、すばらしいことだった、なんて……あはぁあっ♥ し、知りませんでした、わぁ……ンッ、あぁああおチンポぉおッ♥」
 後ろから尻穴を突かれつつ、剛直を挟み込んだ乳房を自ら乱暴に揉み、こね回してアイリは喘いだ。
「ンッ、あ、ふぁああああ♥ おちんぽぉ♥ おチンポ最高ですわぁっ♥」
 繰り返される前後からの抽挿に、熱く火照った身体が溶けていく。腸内と乳内で大きく膨れ上がった肉棒の感触に陶酔しながら、アイリはその瞬間が近付いてきていることに気付かされていた。
 もうすぐ、爆ぜるのだ。
 限界まで膨れ上がった、何年もの間女日照りで溜まりに溜まっていた浮浪者達のモノが、大爆発を起こす。
「あぃいい♥ ひっ、はぁあチンポぉおお♥」
「はぁ、はぁ! も、もぉそろそろ……げ、限界だ!」
「こ、こっちも……あ、ぐ! で、射精るぞ!」
 射精る、という言葉にアイリは色めき立った。
 これまでもずっと想像以上の未知の快楽で自分を責めてきた男達の、射精。それが果たしてどれほどの破壊力を秘めているのか、想像するに余る。
 胸に挟んだ剛直の匂いと味が、一層濃くなった気がした。ツンと鼻腔を犯す臭気がより深く、舌を刺激する妙味も濃厚さを増している。
「イ、イッてくださいませぇえ♥ おチンポ、わたくしのお乳マンコとおケツマンコで思う存分射精してくださいぃいいッ♥ ほ、欲しいのですわぁあ! おチンポ汁ぅ、んはぁあああおチンポ汁たくさんほしひぃですぅうううッ♥」
「よ、よし! け、ケツんナカに射精すぞ! お、俺の精液を、そのドスケベなケツマンコで受け止めやがれ!」
「こっちも、乳マンコに乳内射精してやる! タップリと、味わえぇええ!!」
 限界を迎えていた激しい抽挿が、ついにその最後の一線を越えた。
「おひぃいいいいいいイイイイイイイイイイッ♥ イくッ♥ イくイぐイッくふぅうううううぅぅぅうううううううううううううううううッッ♥」
 溺れそうなくらい大量の、精液。
 凄まじい勢い、匂い、味。
 あまりにも壮絶だった。壮絶過ぎた。
「ふぎっ、あっ、ふ、ぉおお……〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ♥」
 肉体も霊体も、全てが大気に溶け消えてしまったのではないかとそんな不安が一瞬頭を過ぎった。
 消えるのは、怖い。嫌だ。
 何より、今消えたくない理由は、コレだった。
「はぁああアンッ」
 尻穴から肉棒を引き抜かれ、アイリはやや淋しげに喘いだ。乳房からも肉棒が放れていく。なんという喪失感だろうか。
 身を捩り、悲しげに吐息を漏らす。
 大量の精液を注がれたおかげか、精気不足は解消されていた。なのに、物足りなく、たまらなく空虚だった。
 今は何よりもあの快楽が恋しく、愛おしい。
(もっと、もっと欲しいですのに……おチンポで、滅茶苦茶にして欲しいですのに!)
「おっと、そんな悲しそうな顔しないでくれよぉ姉ちゃん」
「……あっ♥」
 不意にかけられたその声は、冥界の死霊であるアイリにさえ天からの救いの声であるかのように聞こえた。
「俺達も、しっかりキモチ良くしてもらわねぇとなぁ」
 見渡せば周囲にはまだまだ何人もの浮浪者達が剛直をいきり勃たせて自分達の出番を今か今かと待ち構えている。いったい何人いるものか……いや、それどころかこの下民層にいる全ての男達を相手にしてもいいくらいだ。
 アイリの中で、貪欲な雌が嬌笑をあげる。
「……ええ、わかりましたわ。皆様、この私が一滴残らずおチンポ汁を搾り尽くしてさしあげますわ♥」
 他人に尽くすことを至上の慶びとしてきたはずの自分が、こんなにも己の欲求のために突き動かされるのは初めてのことだ。
 この上なく淫らな仕草で唇を舐め、アイリは剛直へと手を伸ばした。
 主人への忠節も、少年への想いも忘れ、冥土へ誘うものは、今まさに自分は生まれ変わったかのようにその変節を受け止めていた。





END   






絵:寒天示現流





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