淫海に堕つ




◆    ◆    ◆





 波音とは異なる粘着質な水音が聞こえ、船の揺れとは異なる震動が船室を揺らしていた。古めかしいオイルランプに照らされた室内は昼間でも関係無しに薄暗く、絡み合う男女の肌をぼうっと幻のように映し出している。
 ……否。
「ンッ、ふぅ……あっ、ああっ!」
 嬌声をあげ、長い髪を振り乱しながら男達の慰み者にされている女は確かに現世の者ではなかった。その肉体はまだはっきりと生身を保ってはいるものの、髪の先が微かに薄れ揺らぎ、幽冥の感を醸し出している。
「ダ、ダメ……ですわ……おやめ、なさい……ヒッ、あぁああああっ」
 激しい痙攣が女の身体を襲った。
 夥しい量の雄汁が吐精され、それが彼女の膣内を満たし、さらには引き抜かれた勢いで剥き出しの胸や腹、やや幼げな美貌を汚し尽くしていく。と、不思議なことに薄れていた髪の先端が精を浴びた瞬間現世に引き戻されたかのように存在感を増していた。
「く、……ふぅ。たまんねぇなぁ、大海賊のリリアナさんよぉ」
 たった今リリアナに射精した男はそう言って彼女の頬から耳たぶを優しく撫で上げ、ニヤニヤと満足げな笑みを浮かべた。
「まさかあの伝説の海賊とヤれるなんざ、こんな役得想像もしてなかったぜ」
「そうそう。こりゃ沼地の魔女様とやらに大感謝だな」
「むさっ苦しい野郎ばかりの海賊稼業に、最高の精液便所を御用意してくだすったんだからよ……おぉラッ!!」
「ひぐぅうううぃいいいいいいいイイッ!?」
 悲鳴に重なり、下卑た哄笑が室内に響いた。
 リリアナを取り囲む男達は、今この船室にいるだけで十名余。他にも代わる代わる、この海賊船の船員がやって来ては彼女を嬲り、玩弄していく。そんな状態がもう何日続いていることだろう。
「ふ、ぐ……あっ、うぅ……せ、精気さえ、あれば……貴方達のような下衆野郎共、私の海賊団が華麗に蹴散らして差し上げますのに……ッ!」
 リリアナの言葉は、決して大言壮語というわけではない。
 かつて大陸近海を荒らし回った伝説の女海賊、キャプテン・リリアナ。彼女はこの現世に再び魂を呼び戻された際、甦らせた張本人である沼地の魔女から強力な空飛ぶ幽霊船と骸骨船員を操る能力を与えられていた。その力さえあればこの程度の有象無象を倒して退けるくらいわけはないはずだったのだ。
 では何故このような虜囚凌辱の憂き目に遭っているのか、当然理由がある。



 所謂魔女の従僕として復活させられたリリアナは、普段は主の命に従い、商船や女王軍の軍船を襲っては往時のままの華麗にして優雅な略奪行為を謳歌していた。主従の関係にはあっても魔女は比較的リリアナに自由を許してくれたし、生前と変わらぬ海賊家業が楽しめるのなら願ってもない。
 そしてその日、リリアナの幽霊海賊団が獲物に選んだのは、現在大陸近海を縄張りにしている中でも最も強力な海賊団の船だった。理由は単純に目障りだったためだ。必要以上の殺戮を繰り返す彼らはリリアナの美学に大いに反する。
 開戦当初はリリアナ側の圧倒的優勢だった。大陸でも有数の使い手たる美闘士達とも互角以上に渡り合えるリリアナの個人戦力と、通常の武器では傷つけることすらかなわない幽霊船員が相手ではいかに当代随一を誇る屈強な海賊達であっても勝ち目など無い。
 それでも彼らにも意地があった。悪辣非道を貫いてきた無法者ながら、無法者であるが故の意地を盾に、海賊達は粘って粘って粘り抜いた。そしてその意地と粘りが、結果として彼らに奇跡的な逆転劇を招き寄せた。
 悲しいかな、リリアナがどれほど優れた力を持っていようと彼女も船員も死人であり、当初の予想より遙かに粘りを見せた海賊達の前に遂に力の源である精気が尽きてしまったのだ。精気が尽きてしまえば幽霊船も船員達も維持出来ず、下手をすればリリアナの魂は冥界に逆戻りとなってしまう。
 屈辱に臍を噛みながら、女海賊は一時撤退を試みた。が、その一瞬の隙こそ海賊達が粘りながら待ち続けていたものだった。
 かつて彼らが手に入れた財宝の中に、死せる魂を現世に捕らえると言われる呪符があった。これまでは特に使いどころもなく船の宝物庫で眠っていたわけだが、今、その存在はまさに青天の霹靂だった。
 結果、リリアナは敢えなく捕らえられ、船室に閉じ込められてしまった。
 海賊達の精気さえ奪えば脱出は容易、かと思われたが呪符もなかなかに強力なもので、原理は不明ながら、どれだけ彼らの精を浴びても吸ってもかろうじて存在を維持可能な程度にしか回復してくれない。
 最早海賊達にとってリリアナは恐るるに足りない、ただの小娘に過ぎなかった。
 否、ただの小娘……というのには語弊があったかも知れない。
 彼らにとって、リリアナは極上の雌。
 どれだけ犯そうと、どれだけ嬲ろうと、どれだけ蹂躙しようとも死ぬ事のない、永遠の雌肉奴隷を彼らは手に入れたのだった。



「はっ、あっ、やっ、んぁあああああああッ♥」
 リリアナのその豊満な胸に反して細身の腰が捻れ、仰け反り、今日何度目かもわからない不本意な絶頂に彼女は追い込まれていた。
「ひぅっ! あっ、い、いい加減に、ふぁああっ♥ な、なさりやがって、ください……ませ、へぁあああああっ♥ わ、私、も、もぉ、これ以上、は……ぁ、はひぃいいいいいいいイイイイイイイッ♥」
「へへ、なーにがいい加減に、だ。こんなにギューギューとマンコ締めやがって。こいつぁ完全に……うっ! チンポ汁を搾り摂るための動き、だぜ。たまんねぇよこのドスケベ海賊様ぁよぉ」
「そのぉ、ようなこと……ひぅっ♥ な、なくってよ!? 私、は……そんな、……ス、スケベ、なんかじゃ……ひはぁあああああああっ♥」
(こんな、ずっと犯され続けていたのでは……はっ、ぐ……し、死んでしまいそう……ですのに、死ねない……から……私、もしかして……このまま、永久に……下衆共の、慰み者……に?)
 絶望の帷がゆっくりと残酷に垂れ下がっていく。
 死人、とは言え疲労という概念がないわけではない。
 受肉して活動している以上、今のリリアナにはその肉体に依るところの体力は確かに存在していて、数日間殆ど休み無しで犯され続けていれば無論死なないというだけで身も心もとうに限界に達していた。
 最初は屈辱と悔しさから懸命に抵抗していた。それがやがて粘膜に快感を刻まれ続ける事で陥落し、今はただ気が狂いそうになる程の官能を怖れ耐えながら、無理矢理に与え続けられているだけの状態が続いてしまっている。
「あっ♥ はっ、ひぅううっ! うっ♥ おっ、ナカぁ……んぁあっ♥ やっ、やぶ……やぶけ、て……ふくっ、きひぃイイイッ♥」
(硬くて膨らんでいるモノがぁあっ! 下衆な野郎のチンポッ、おチンポが、擦れて、抉ってぇえ♥ 駄目ですのに……こんなコト、あってはいけませんのにぃ……っ)
「お? ココがキモチイイのかぁリリアナちゃんよぉ?」
「んぉおおおおほぉおおおおおおおおおおお♥」
 汗と唾液、精液と愛液が入り交じった混合汁で汚れた裸身が痙攣する。
 イヤらしくぬめり、くすんだ肌を愛撫しながら海賊はリリアナの反応の良い箇所を狙い澄まして肉剛直を何度も何度も叩き込んだ。
「らめっ♥ はっ、ひぃいいいン♥ ちっ……ちんっ、ちんぽぉ♥ りゃめれすのぉ♥ はげしっ、はぎゃっ、ふぎぃいぁあああああああああああッ♥」
「おいおい、反応良すぎだぜ。そんなにチンポハメられてキモチ良いのか?」
「どうしようもねぇハメ穴だな。反応良すぎだぜ……うっ! ま、またたっぷり射精ちまいそうだ……ッ! 嬉しいか? え? 嬉しいだろ!?」
「うっ、うれひくなんて、ありま、せん、わ……ぁっ♥ ありま、しぇんからっ、はやくっ、ぬ、抜いて……ひぐぅうっ!? おっ、おちんぽビクビクって♥ さしぇないでっ、おチンポぬいてぇええええっ♥」
 拷問以外のなにものでもなかった。
 死なない肉体を淫辱され続けるこの拷問は、甘美で、狡猾で、逃れがたい中毒性を遺憾なく発揮してリリアナの肉に喰い込み、媚穴を埋め、抉る。
「やっ、ああああ♥ おちんぽッ♥ おちんぽダメッ、ですの、よぉあヒィンッ♥ おっ、オマンコも、お尻の穴まで……ぷっくりふくらんだゴツゴツのおちんぽでホジホジしちゃ、やぁあああああああああっ♥」
「ダメだダメだって言われても、チンポを咥え込んで放さないのはテメェのこのエロダラしねぇスケベマンコじゃねぇか! えぇ!?」
「ん、あぁああっ♥ しょ、しょんにゃ……にゃひぃいいいいい♥」
 もはや犯されていない部位など無い。
 射精を目前に控え、より硬く熱く膨張した肉棒によって膣腔と直腸を遮二無二突かれまくる暴力的なピストンに陶然としながら、リリアナは赤々と火照った顔を羞恥に歪めた。
「く、ひひひ! まったく、すげぇ女だよアンタは。どんだけ抱いてもちっとも飽きやしねぇ。それどころか抱けば抱くほどチンポがギンギンにおっ勃ちやがる!」
「おう、おう、たまんねぇよこのマンコも、ケツマンコも。けど、一番は――」
 言いかけて、正面に立っていた男は悦虐とした面相でリリアナに笑いかけるといったん腰を引き、彼女の爆満な胸の谷間へといきり勃った剛直を突き込んだ。
「ひぐぃいいいいいいいっ♥」
「この、極上の乳マンコだ!!」
「ひゃめっ、わっ、私のおっぱいィイひゃぁああああ♥ ひょ、ひょんなふうにお使いにならにゃいでぇえええンひぃいいいいいぉおおおおおおッ♥」
(私のおっぱいが、おチンポに犯されまくって……このまま、では……匂い、くっさいエロチンポ臭が、とれなくなって……んヒィ♥ おっぱいの、カタチも……ちんぽの型、つけられちゃって……戻らなくなって、しまいますわぁ……んぁあああっ♥ で、でもっ、でもぉ♥)
「この爆乳もチンポ専用のハメ肉に変えてやんぜ。チンポの匂いがとれないようにじっくり丹念に染み込ませてやる!」
「やぁああっ♥ おちんぽっ♥ ちんぽの匂い、い、やだっ、やぁあああッ♥」
 嫌だやめてと喚きながら、リリアナの肉体は自らの爆乳を性器扱いされる事を法悦の極みと感じていた。男の歪みきった欲望が忌々しく怖ろしいのに、乳肉を内から焼くこの熱さにたまらなく酔いしれる。熱が肉を焼き、脳を焦がすのだ。
「はっ、だ、ダメ、ですわ……ぁっ♥ 下衆野郎のおチンポ、なんかで……む、胸ぇ、お、犯されてるのに……ふはぁあっ♥ わ、私、こんな……き、キモチ、よく、なんて……ほ、おぉ♥ はひぅうううっ♥」
「ハンッ! 戦闘中にもこれ見よがしにバナナなんざしゃぶりやがってよ。本当はもっとブッとくて硬いモンを咥えたかったんだろ? ヘヘ。ほら、咥えろよ」
「そっ、そんなこと……ンブッ!? ありまひぇ、ふ、ぶぅ、ぐむぅうう! んむぅううううううううううううううッ♥」






 膣を犯され、胸を犯され、口腔を犯され。
 そんな最悪で最高の嬌態に、新たな精液が吐き出される。
「オラッ! いくぞ! 便器マンコで雄汁たっぷり受け取りやがれぁああ!!」
「ケツマンコにも射精してやるっ! くっ、喰らえオラァア!!」
「イヒィイイイイイイッ♥ イクッ♥ おチンポ汁どっちの穴もいっぱいにされて私またっ、またイッてしまうぅうううひぉおおおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜ッ♥」
(熱い、熱い迸りが……身体、内側から……燃えてしまう……ああっ♥)
 直腸も子宮も胃も彼らが吐き出した精で満たされきっていた。
 そのまま男の胸に倒れ込み、リリアナは深く息を吸った。
 日に焼けた、筋骨隆々の海賊達。ろくに風呂にも入らず、潮風にまみれ続けた男達の匂いに目眩がする。
 けれどそれが……心地良い。
 嫌がる素振りを見せながら、それでもリリアナの艶やかな唇は、無意識に媚笑を形作っていた。このままずっと犯されていたくて、ペロリと舌が男の汗を舐め取り、口内で何度も何度も咀嚼し、反芻し、味わい尽くす。
「……あっ、はぁ♥」
 夢遊病者のようにフラフラと身を起こすと、リリアナはうっとりとパイズリ奉仕を再開した。もっと強烈な匂いが、欲しい。本能がそう囁きかける。
 赤い舌が淫猥に伸び、亀頭に甘くかぶりつく。
「ンッ♥ ふむ、んぅううう♥ おひんぽ♥ んぉおっ……ひんぽぉ♥」
(私、違いますのに……こんな、濫りがましく……おちんぽを咥えて、おちんぽ汁を舐めて、啜って……違いますのに、違い、ますのに……ぃ♥)
 違う“なのに”、違う“けれど”……その言い訳がましさがむしろ浅ましい。
 とうに死した身。命を宿すことなど不可能なはずの子宮が、突かれ、子種を流し込まれるたびに激しく疼く。
 キュンッ、キュンッ、と甘々しい刺激を伝えてくるそれに、リリアナは病みつきだった。千々に乱れる意識の中、肉と粘膜だけは真っさらに、正直に、乱れ蠢く。
 もっと欲しい、もっと感じたい、もっと味わいたい。
 その欲望が、女海賊を深く奈落に沈降させていく。
「あふっ、あっ、ひゃあぅっ♥」
「へ、へへ……積極的になってきたじゃねぇか」
「ようやく自覚出来たのか? テメェが誇り高き女海賊なんかじゃなく、ただのハメ穴便器女だってことが。くぅううう、この喉マンコの具合も、最高だな、おい」
「クックク! このまま搾り尽くされちまいそうだなぁ」
 そんな男達の何気ない言葉に、リリアナはようやく答えを見つけた気がした。
(……ああ、そう……でしたのね)
 これも略奪なのだ。
 男達が干涸らびるまで精を搾り奪り続ける、大海賊リリアナの華麗で、優雅で、淫靡で、艶猥な、略奪行為。
 己の欲と、男達の欲とのぶつかり合い。それを制した者が、全てを得る。
(なら……私は、……大海賊リリアナが為すべきは――)
 そう考えた途端、リリアナは目の前の曇りが晴れたかのような気がした。
「おっ、おぉおおおっ!?」
 急に肉棒を扱く乳房の動きが激しさを増し、男は狼狽した。
 圧し潰されそうな甘い乳圧、精巣の中身を根刮ぎ吸い尽くそうとするかのような吸引力に陰嚢が震え、快感が稲妻となって全身を駆け巡る。
「……んっ、はっ、あぁああ♥ ちんぽっ♥ おちんぽ、チンポ汁ぅ♥ もっと私に、お寄越しあそばせ? ふ、くひぅっ♥ きゅふ、はぁあああ♥ イイですわぁっ♥ 下郎共の汚くて、くっさいちんぽぉ♥ しょっぱくて、苦くて、たまらない……♥ おちんぽっ♥ たまらないですのぉんふぉおおおおおお♥」
「あっ、あがっ、がぁあああああああっ!?」
 全てを、奪う。
 そう覚悟を決めたリリアナの全力は男を容易く呑み込み、打ちのめした。
 尿道を凄まじい勢いで精液が迫り上がり、耐える間も無く、亀頭が爆ぜる。
「いがぁああああ!! でっ、射精るぅううううううっ!!」
「んぶっ♥ ふ、んむぅうううううううううううううう〜〜〜〜〜〜〜ッッ♥」
 口内で大爆発した精液を歓喜と受け止め、リリアナは亀頭を舐めしゃぶりながらさらにさらにと吸引した。ドロドロの精液の味が口中に広がり、たまらない精臭が鼻腔へと抜けていく。
(あっ、あぁあああ……♥ おちんぽっ♥ 私が略奪した、私だけのおチンポザーメンの美味と、芳しい香りが……たまらない、たまりませんわぁ♥)
「おぐっ、う、……すっ、すげ……がぁあ……っ」
 ビクンビクンと何度も下半身を震わせながら、男の陰茎は一時的に萎えそうになったものの、リリアナがそれを許さない。
「んむっ♥ はぶ……んちゅっ、じゅる、レロ……ぢゅぷるっ♥」
「いっ、ぎ……おぉおおおお……っ」
 巧みな舌技と乳圧により男を再度怒張させたリリアナは、唇の端を微かに釣り上げ、淫魔の如き笑みを浮かべた。
 男達が、ゴクリと喉を鳴らす。
(フフ……そう、その顔ですのよ……奪われる側の、可愛らしい、お顔……♥)
 リリアナから放たれる壮絶な淫気にあてられ背筋を凍らせながら、それでも逸物だけは熱く滾らせた海賊達は、ワケもわからず吼えた。吼えながらリリアナへと殺到し、その媚肉を貪る。
「うおっ、うぉおおおおおおおおおお!!」
「あぁあああああああっ! うぉああああああああああああっ!!」
「はぁあんッ♥ はっ、ンッ、きゅふぅううううンッ♥」
(……ですけど、本当に貪るのは、これからは私の方、ですわ……♥)
 淫爛と妖しげな光を放つリリアナの眼を、果たして誰か一人でもまともに正視しただろうか。
 男達の精を、生命の種を略奪しながら、女大海賊は生臭い勝利の美酒を味わい、官能の海のただ中、恍惚と陶酔した。





〜END〜







イラスト:寒天


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