竜姦閃シリーズ
〜あらすじ〜

StS本編終了から七年後。
逞しく成長したエリオと交際するようになり、結婚を間近に控え幸福の絶頂にあったフェイト。
そんなある日フェイトを訪ねて来たのは、二年前――

フェイトが、エリオに想いを告げられ、受け入れたあの日

――から消息を絶っていた、キャロだった。
かつての彼女とはまるで違う貌で微笑みながら、キャロは哀しい愛憎をフェイトへとぶつけ、竜姦の地獄へ堕とさんとする。
狂ってしまった歯車は、さらなる崩壊へと向けて回り続けていた。



◆    ◆    ◆





「……そろそろだと、思うんだけどなぁ」
 宙を見上げ、キャロはそんな風に呟いていた。
 何がそろそろなのか、わからぬままに――
「いひぃいいいいいいっ!?」
 フェイトの中で、何かが変わっていた。
「あ、ようやく効いてきたんだ。結構時間かかりましたね」
「ひゃ、ひゃふ、にゃ、にひぃっ、こ、こぉ……ッ!?」
 ヴォルテールの生殖器から滲み出るなにかが、上下に激しくピストンするたびにフェイトの膣壁へと染み込んでいく。そこから生じた熱が、フェイトの脳を冒しつつあった。
「やっ、やはぁ……んっ! ひ、ぎぃッ、……はが、はへぇ……?」
 だらしなくヨダレを垂らしながら、焦点の定まらない目でフェイトはキャロを見た。
「竜の精液には、強力な催淫、媚薬効果があるんです」
 何とも嬉しそうに、キャロは竜の生体について語り出す。
「竜はあらゆる強力な生物の遺伝子情報を備えた、自然が産んだ最強の合成獣です。より多くの強い力を求め、貪欲に異種交配を繰り返してきました。そのために必須だった能力が、この精液……竜精と呼ばれるものです」
 膣の中が、竜精とやらで満たされていくのをフェイトは感じていた。
 まだ射精には至っていないと言うのに、既に充分すぎる量の先走りが膣内を満たし、窮屈でぎこちの無かった上下運動をスムーズなものに変えてしまっていた。
「ひっ、ひひゃっ、りゃ、りゃあああっ!?」
 まったくの未知の感覚に襲われ、フェイトは激しく混乱していた。
 先程までの激痛が嘘のように、今や股間からは別の感覚が脊髄を通り脳へと達していた。
 身体が、熱い。
 脚の爪先から長く艶やかな金色の髪の先まで――熱さが、迅る。
 全身を、駆け巡っている。
「な、なに、こ……こ、おぉおおおっ!? これ、これなん、らのぉおっ!?」
「フェイトさん……顔、真っ赤にしちゃって。すっごく、色っぽいですよ?」
「ひゃふっ? え、えふぅ、い、いぃ……わ、わかん……なぁ、……わかんなひっ、わか、……あ、あん……っ! わか……にゃひぃいいいっ!?」
 触手が胸を力強く搾り、さらには細長い触覚のようなものが乳首を抓んだりつっついたりしていた。自分の胸は大きくそれに柔らかいと認識はしていたものの、ここまで激しく形を変えるだなんてフェイトは思ってもみなかった。乳首だって、ビンビンに勃起して震えている。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
 怖さの対象が、いつの間にか変わっていた。
 今のフェイトは自分が怖ろしかった。
 どうなっているのか、どうなってしまうのかわからない自分が怖くて仕方がなかった。
「きゃ、きゃ……ろぉ……も、もぉ……ゆるひ、ゆ……ゆる……っ、ふ、くぅんっ……! りゃ、ひぁあッ! ……ゆるひ、へ……へぁ……あふ、ふぐぅッ」
 フェイトの懇願を、キャロは涼しい顔で聞いていた。まるで穏やかな午後をクラシックでも聴きながら過ごすかのようなたたずまいで。
 それが、彼女の答えだった。
「ヴォルテール……嬉しそう。良かったね……これで、安心出来るね」
 黒竜の咆吼が洞窟内に木霊し、パラパラと石片が頭上から落ちてくる。今さらだが、よくもまぁこのような巨大な生物と……そう考えただけで、フェイトはゾッとした。
 味方だった時にはあんなにも頼もしかったヴォルテールが、今や悪魔としか思えない。
「ほら、フェイトさん。ヴォルテールも嬉しいって。……これで、子供も遺せるし、安心して逝ける……って」
 虚ろな目で、キャロは呟いていた。
「ど、どー……いう……むぐぉっ!?」
 いったいどういう事なのか、尋ねようとしたフェイトの口を、触手が塞いでいた。急激に口内に侵入してきたソレ自体が並の男性器と同等、否、以上の大きさのものだ。無論、フェイトに他者と比較するような知識も経験もなかったが、太い幹にコブのような亀頭を持つ触手で無理矢理に喉奧までを犯されてはたまったものではない。
「げふっ、ふぐぅ、ぎっ! ごっ、ふごっ、げっ、んぐぶぅううううっ!?」
 白目を剥きながら、フェイトは触手の先端から分泌される竜精と込み上げてくる胃液の味と匂いに意識を刈り取られる寸前だった。
 堕ちる。
 このままでは、自分は間違いなく堕ちてしまう。
 フェイトは必死だった。必死に、自己を守ろうとした。湧きあがってくる正体不明の感覚に全て支配されてしまわぬよう、魔導師としての、人間としての、女としての矜持に懸けて、堪えた。
 堪えようと、した。
 ――なのに。
「ぶぼぉッッ!?」
 突如、口中で熱い何かが弾けていた。
 ドロリとした感触が一気に喉をくだり、さらには勢いよく弾けすぎたために鼻腔を突き抜け鼻にまで抜けた分が無様に噴き出す。口の場合は、言わずもがなだ。ヨダレや胃液と混じり合った、ヨーグルトのようなものがボトボトと口端からこぼれ落ちていく。
「……始まったみたいですね」
 何が始まったのか、そんな事疑問に思う暇すら与えられず……
「ぶぐ、ぷはぁっ!! ……げふっ! げぇ、げぇえええええええっぶゲぐぅッ!?」
 ようやく口から触手が抜け出たことで、ブチまけられたものを嘔吐しようとしたフェイトに、また別の触手が突っ込まれた。今度は最初から激しく、フェイトの身体を貫こうとでもするかのように触手は口内を、喉を犯しまくっていく。
「ぐぶっ、ごびゅうううっ!! んびゅっ、ぐべぇっ、げばっ、んごぉおおおっ!?」
「あーあ、汚いなぁフェイトさん。涙と鼻水とヨダレと……ザーメンまみれで」
 ザーメン。
 あまり馴染みのない言葉ではあったが、知らないわけではない。
 だが、それは……キャロの言葉通りなら強力な媚薬効果を持つはずで――
「げびぃいいいいいいいっ!?」
 全身に電流をながされたかのように、フェイトは激しく痙攣していた。ヴォルテールの生殖器に深々と貫かれたままの身体が大きく弾む。
 わからない。わからないわからないわからないわかるはずがない。
 意識が、支配されていく。澱んだ感覚が、フェイトの存在そのものを包み込む。
 これは……なんだ。なんなのだろう?
 疼く。
 どうしようもなく疼く。
 どこが?
 股間も、口も、胸も、手も、足も、尻も、それに……子宮も――
「あっ、あーっ、あーーーーーーーッッ!!」
 白い波濤がフェイトの意識を押し流していく。
 抗えない。抗いきれない。抗おうにも、術がない。
 もうこれ以上の衝撃はないだろう。そんなものがこの世に存在しようものなら、自分なんてひとたまりもない。呑み込まれそうになりながら、フェイトはそう感じていた。
 ――それすら甘かったのだと、次の瞬間思い知らされる。
「むぉぐゥううううぅぅうううウウウッッッ!?」
 何かが、伸びていた。
 膣内。奥深くまで挿入され、子宮口をノックし続けているヴォルテールの剛直、亀頭の先端から、何かが伸びていた。
 それが、さらなる侵入を果たそうとしている。
 子宮口をこじ開けて、さらにその奧の奧まで、フェイトの最後の扉の向こうに入り込もうとしているのがはっきりと理解出来た。
「はぐぅうううううううっ!? ひ、ひぎぅうううううううううううッ!!」
 言葉である必要すらない。
 ただひたすらに己の意思を、拒絶を訴え、フェイトは涙した。キャロへの謝罪でも何でもなく、自らの保身のために頭を下げようとした。
 けれどそんなこと、彼女は許さない。
 暗い憎悪に頬を歪ませ、キャロは……嗤った。
「クスクス。さっき始まったって言ったじゃないですか。それがヴォルテールの、竜の射精なんですよ」
 情の欠片も感じさせない、氷のような怜悧さで。
 桃色の少女が嗤う。
「竜はその長い一生のうち、一度しか生殖行為をしないって言いましたよね? ……最強種である竜は、無闇やたらに子を残せないんです。自然界のバランスが、完全に狂ってしまうから」
 おとぎ話でも語り聞かせるかのように、キャロは続ける。
「だから、竜はその一生の最期に……自らの子を宿すに相応しいと決めた相手と、生涯で一度きりの性交をするんです。ロマンティックですよね。そうすることで、竜は強い遺伝子を取り込み、昇華し、遺し続けてきた」
「ぐっぷ、ぐぱぁ、ひぐぅうううううううっ!」
「もぉ、ちゃんと聞いてくださいよフェイトさん。そんなにみっともなくよがってないで」
 頬を膨らませたキャロに注意され、フェイトは涙に曇った目を見開いて、自分の知るキャロではなくなってしまったキャロを見つめていた。その間にも、フェイトの子宮へと細長い何かが確実に侵入を果たしていく。
「ヴォルテールも……この二年間、わたしを守るために無理し続けて……もう、限界なんです。生命が、尽きようとしている。本当なら……召喚師、竜の巫女として選ばれたわたしが彼の子を宿してあげなくちゃいけないのに……彼は、そんな事しなくていいって言うんです。これ以上、わたしを傷つけたくない、って」
 キャロの頬を、一筋の涙が伝った。
「優しいヴォルテール。わたしを守り、支え続けてくれたヴォルテール。わたしは……彼のために何かしてあげたかった。……ク、クク……そしたら、いたじゃないですかぁ。わたしなんかよりずっと強くて、綺麗で……わたしにたくさんのものを与えて、全てを奪っていってしまった女性がっ」
 両手を大きく振るい、演説でもするかのようにキャロは高らかに言った。
 と同時に、フェイトの子宮内に完全にナニかが入り込んでいた。
「もう、入りきっちゃったみたいですね。それ、竜管って言うんです。特殊な軟骨なんですけど、真ん中に穴が空いたストロー状のもので、……雌の子宮の奧にまで入り込むと、直接そこから精液をブチまけるんですよ」
「ぎゅぐぅッッ!?」
 フェイトの顔が、今度こそ完全な絶望に染まっていた。
「ほら、ヴォルテールが……もう我慢の限界だって言ってる」
 黒竜の唸り声は確かに今までのものとは異なっていた。
「ひぃ、ぎひぃいいいいいっ!? んぐっ、げぶぅうううううっ!!」
 逃げなければ。
 逃げなければ駄目だ。キャロが言っていることは真実だ。
 わかる。今、自分の腹を満たしているソレからマグマのような灼熱の精液が噴き出そうとしているのが手に取るようにわかってしまう。
「はがぁっ、ひぃぎぅうっ! んぐふっ、ぐぶぅうううっ!!」
 視界が霞む。
 その瞬間、フェイトが見ていたのはキャロのあの笑顔だった。
 そして、フェイトの体内で、ヴォルテールの欲望が、解き放たれた。





◆    ◆    ◆
◆    ◆    ◆





「――――――――――――――ッッ!!」
 裂ける、と。
 そう感じたことすら束の間だった。
「あはは、あは、あーはっはっはっはっはっは!!」
 キャロの哄笑が遠い。
 別の世界に意識も身体も跳ばされてしまったかのようだった。
 爆発している。
 子宮の中で、熱いナニかが大爆発していた。
 身体中が満たされていくかのような感覚。
 震える。
 全身が、震える。
 手足が痙攣し、やがて入りきらない精液がフェイトの秘所からドロドロと溢れ出した。
 触手から出されたものよりもさらに濃い。もはや液状ではなく固形物だ。精子の一つ一つが視認出来るのではないかと本気でそう思った。
 疼きが、収まっていった。
 不思議な満足感があった。同時に、もっともっと、さらに求めるかのような奇怪な感覚も不気味な鎌首をもたげていた。
 駄目だ。
 この感覚は、駄目だ。
 湧きあがる感覚を懸命に否定しながら――フェイトの意識は、闇の中に沈んでいった。








◆    ◆    ◆





「あはっ。わたし、オッパイ大きくなったでしょ? エリオ君。……んっ、ふぅ」
 七年前とは比較にならない、それどころか二年前と比べても大きくたわわに成長した胸をエリオの鼻面へと押しつけ、キャロは恍惚と喘いだ。
「すごいなぁ……わたし、知らなかったよ……好きな人に胸が触れると……あっ、んあ、くぅ……こ、こんなに……気持ち、良いんだね……」
 言いながら、キャロはローブと着衣に手をかけ、ゆっくりと一枚ずつ脱いでいく。エリオに、そしてフェイトに見せつけるように。そうして、肌身が外気に晒された瞬間、エリオは目を見開いていた。事前にその事を知っていたフェイトでさえ、言葉を失う。
「ちょっと、ね。恥ずかしいんだ。……わたし、傷だらけだし」
 各所に見える痛々しい傷痕は、ままキャロの凄絶な二年間を雄弁に物語っていた。特に酷いのは右の脚の付け根から太股にかけて走る裂傷だ。
「気になる? エリオ君。……フェイトさんも」
 満面の笑顔。
 底の見えない暗い沼のような笑顔に、二人は呑み込まれた。
「これ、ね。この傷、わたしが処女を奪われた時のもの、なんだぁ……クスクス。あの時は、本当、全力で抵抗したの。絶対に、嫌だったから。エリオ君の名前呼びながら、足を閉じて。そしたら向こうも、別にこっちが傷つこうとお構いなしだもの。男の人って、女の子の傷とかもっと気にするものだって思ってたけど、違ってたんだね。戦場では、それこそただ穴さえ開いてれば顔だろうと身体だろうとグチャグチャになってても全然気にならないみたい」
 饒舌なのが尚更に薄ら寒い。温かみなど欠片も感じさせない空虚さで、キャロは下着も脱いでいく。現れた裸身は、フェイトほどではないにせよ均整のとれた抜群のプロポーションだった。
「フェイトさんと比べたりしないでね、エリオ君。……あっ、でもフェイトさん処女だったし、エリオ君もしかして見たこと無かったりした? あっははははははは♪」
 腹に手をあてわざと大袈裟に笑う様は、今さらながらにこれが本当にあのキャロ・ル・ルシエなのかとエリオにさらなる絶望を与えた。彼女がこうなってしまったのが自分のせいだなんて、本当に……悲しいのか、辛いのか。
「ね、どうなのエリオ君。フェイトさんの裸……あ、でも子供の頃に一緒にお風呂入ったりしたし、見たことはあるよね。だったら久しぶりだ」
 言って、キャロはヴォルテールの精液まみれになったフェイトの胸へと視線を送り、エリオの目もそちらに導いた。
「ッ!」
 見ないで欲しい、と。フェイトは顔を逸らそうとするも、ヴォルテールの触手がそれを許さない。顔の位置を固定され、細長い触手に舌を絡め取られながら、不本意に快楽の声をあげてしまう。
「くっ、んあぁああっ! や、やめ……エリオに、こんな……見せ、ないでぇ……っ」
「何言ってるんですか、今さら。もっと見せちゃいましょうよ。チンポ狂いの、変態保護者の顔。……ああ、今は変態婚約者でしたっけ?」
 空虚な顔が嘲笑で歪む。
 腑を蝕むようなどす黒い悪意だった。憎悪などと生易しいものではない。キャロは、自らの恋の終焉とそこから始まった全ての不幸をフェイトへとぶつけている。かつて彼女へ向けていた情愛と等しい大きさでもって、今、キャロはフェイトを呪っていた。故に、フェイトはキャロを憎めない。処女を奪われ、竜姦の贄とされた今でも、キャロはフェイトの大切な娘だった。
 だから、涙が頬を伝うのだ。
「あはは、フェイトさん、嬉しそう。涙まで流してヴォルテールのチンチンくわえこんじゃうなんて、凄いなぁ。処女膜破られてからまだ数時間しか経ってないのに……やっぱり、イヤらしいカラダしてだだけのコトはあったんですね」
「んぷっ、ふぅ、くはぁああああっ!!」
 馬鹿にされ、鼻で笑われても……憎むわけにはいかなかった。ただ悲しそうにキャロを見つめ、その隣のエリオから……視線を、逸らす。
「あれぇ? エリオ君、フェイトさんから目、逸らされちゃったよ? もうヴォルテールのオチンチンの方が良くなっちゃったのかなぁ。わたしは……」
「ッ!?」
 声を発せられないエリオの顔色が急変した。
「わたしは、エリオ君のおチンポの方が、良いなぁ」
 ペロリ、と。唇に艶めかしく舌を這わせながら、キャロの手はエリオの股間を愛おしそうにさすっていた。
「キ、キャロッ! あ、あなた何を……っ」
 言うまでもない。キャロが服を脱ぎ始めた時点でわかっていた事だ。けれどフェイトは叫ばずにはいられなかった。それだけは、駄目だ。自らの痴態を見られるよりも、それ……だけは。
「クスクス♪ ……わぁ、エリオ君、硬くなってる。わたしの裸に、じゃないよね。あっちでヴォルテールのチンポ挿入れられて腰振ってる、変態婚約者を見て……勃起しちゃったんだよね」
 言うなり、キャロはエリオの着衣を力尽くで脱がしにかかった。脱がせ難いところは強引に引き千切りながら、彼の肌を露わにし、まるで地獄の餓鬼が食物に飛びつくかのようにエリオの素肌へと口付けていく。
「れぇろ……んちゅ、ちゅぷ……ぺろぺろ……ん、ふ、ふふふ……あははははははは!」
「ッッ!」
 逞しい胸板、腹筋を貪るように舐め回し、吸い付き、時に歯をたて、キャロは淫蕩に狂った。それこそは彼女が望み、欲し続けていた官能なのだろう。空虚だった目が血走っている。エリオを求めるあまりに、彼女は熱を取り戻していた。
「美味しい、エリオ君の……汗ばんだ肌……ああ、凄く、良いニオイがするよぉ……? むさ苦しい男達と全然違うの……芳しくて、ああ、こんなニオイ……初めて嗅ぐなぁ」
 うっとりと、キャロの目が泳いでいた。今まで彼女がどれだけの数の男達に汚されてきたのか、その中に望んで抱かれたことは一度たりとて無いのだろう。おそらくは初めての、彼女が心から望む男の肌身。その感触に、匂いに、味に、キャロは忘我していた。
「コッチの匂いと味は、どうかなぁ」
 股間を這う指は、白い蛇のようだった。
 撫で回し、少し力を入れて握り、扱き、つつく。丹念に、丹念に……それは焦らしているのではなく、キャロが抱き続けた歪んだ想いを凝縮したかのような時間。あらゆる情念を込め、キャロはエリオの男根を弄り回した。
「ふ、ふふ……ふふふ♪」
 白蛇が、笑う。
 ゆっくりとファスナーを下ろし、キャロはパンパンに勃起したエリオの先端へと下着越しに口付けをした。さらに舌でカリ首の辺りを舐め、端を銜えると、引き下ろしにかかる。
「ッ! !!」
 エリオは必死にキャロを止めようとしていた。けれど開閉する口からこぼれ出るのは全くの無音。空気の音さえ発することかなわず、抵抗はあまりにも儚く無為に終わった。
「わぁっ」
 そうして、ついに屹立するエリオのモノを取り出し……キャロは、目を輝かせていた。
「……これが、エリオ君なんだね」
 感極まる、とでも言いたげに。エリオの剛直に優しく触れ、キャロはもうそれだけで達してしまったかのように力無くエリオの上へと覆い被さっていた。
「ふ、ふふ……エリオ君の、オチンチン……どうしてだろう。今までわたしを犯した男達みたいな饐えたチンポ臭さがね、やっぱり、全然無いの。不思議……すっごく、良いニオイ」
 クンクンと鼻を鳴らし、キャロは身体を下へとずらしていった。そのままエリオの剛直を丁度胸で挟み込める位置まで移動する。
「まずは胸で、シテあげるね……ん、しょ」
「! ッ、ッ!!」
 エリオが魔法道具で声を封じられていたのは、フェイトにとってはもしかしたら幸いなことだったのかも知れなかった。彼は必死に耐えているようだが、こうしてヴォルテールの剛直に喘いでしまっている自分を鑑みてもわかる。圧倒的な肉にもたらされる快楽とは、決して抗い続けられる類のものではない。拷問に耐えるのとはワケが違うのだ。
「エリオ君、大きなオッパイ昔から好きだったもんね。わたし、知ってたんだよ? エリオ君がフェイトさんやシグナムさんのオッパイ、いっつも横目でチラ、チラって見てたこと。スバルさんとギンガさんの胸も訓練中によく見てたよね?」
 エリオが濡れ衣とばかりに必死に首を振る。それが可笑しくてたまらないとばかりにキャロは胸で扱くペースを上げた。
「ふっ、ん、くふ、はぁ……ぁんっ? わ、わたし……ずっとね、悲しくて、悔しくて……あの頃はペッタンだったし、大人になっても、どうなるかわからなかったから。……でも、……はぁ……よ、よかった、よ。まだ、フェイトさんよりは小さいけど、こうして、オッパイでエリオ君のおチンポ挟んであげられて……」
 嬉しそうに、気持ちよさそうに、キャロは胸を両側から圧迫してエリオの剛直へと奉仕を続けた。ただ速く強く扱くのではなく緩急をつけ、さらには乳首でカリの部分を刺激したり、亀頭をつっついたりしながらエリオと同時に自分のことも昂ぶらせていっているのが経験も知識も乏しいフェイトにもわかった。





◆    ◆    ◆
◆    ◆    ◆





「きもち、いい? エリオ君。わたしの……キャロのオッパイで、感じてくれてる? ……ふ、ぁああ……んふぅ……ふ、ふふ……オチンチンの先っぽ、ピクピクしてる、ね。……穴ぼこが、パックンって開いちゃってるよ? ……すっごく、イヤらしいよぉ……」
 フェイトが処女であったのと同じく、エリオも童貞だ。パイズリされる経験なんて無論あるはずもない。未知の快楽に、不本意ながら彼の肉体は早くも達しそうになっていた。
 あとほんの少し、数回扱かれただけでイッてしまう。元々それほど性欲が旺盛でないエリオは自慰行為の回数自体同年代の少年達と比べて非常に少なかった。そのため溜まりに溜まった精液が、キャロの胸の中で今にも爆発しようと震えている。
「――ッ!?」
 もう、駄目だ、と。エリオはそう思った。射精してしまう。フェイトの見ている前なのにキャロの胸の中で思いっきり射精してしまう事を覚悟し――
「……、……?」
 ――けれど、その最後の刺激が来なかった。
 エリオの肉棒は根本の辺りをキャロにしっかと握られ、精液が昇り詰めるのを阻止されていた。
「ダメ、だよ……エリオ君。オッパイ大好きなエリオ君としては、パイズリでこのままイッちゃいたいのかも知れないけど……」
 片手でエリオを塞き止めながら、残る片手を股間に回してキャロは微笑した。
「射精すなら、わたしの膣内に射精してくれなくちゃ……ずっと、待ってたんだから。私のオマンコも、子宮も……エリオ君のオチンチンと精液、ずっと待ってたんだよ?」
 ゆっくりと胸を股間から放し、腰を上げて移動させていく。大勢の男達に散々犯されたにしては、悪意に満ちた表情とは対照的にキャロの秘所は綺麗なままだった。
 指で開かれた秘部からは溢れた愛液が滴り落ちている。エリオを招き入れる準備は万端のようだった。
 と、エリオの先端がキャロの秘唇に触れようとした瞬間、
「ダ、ダメェえええええええっ!! キ、キャロ、お願い、それだけは……それだけは、やめてぇえっ!! お願いだから、お願いだからぁあっ!!」
 やもすれば破瓜の瞬間よりも激しい、フェイトの絶叫が響き渡っていた。
「お願い……ひっ、く、……すんっ……お、お願いだから……何でも、他のことなら何だって言うことを聞くから……それだけは……お願い、キャロ……そ、それ、だけはぁ……」
 弱々しい、けれど心底からの懇願。
 強く気丈で美しい、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンという女性の内面。これ以上ないくらいにさらけ出された精神的な脆さに、キャロは完全な能面で応えた。思惟など欠片も読みとれない、虚ろな貌。底の見えない澱んだ瞳。
「お願い……お願いだから……キャロぉ……」
 どんなに無様でも情けなくても構わない。けれどフェイトはそれだけは嫌だった。もしもそんな光景を見せつけられてしまったら、今度こそ自分は完全に壊れる。竜精で壊れかけた時よりも、おそらくは理性の欠片すら残さず粉々に砕かれてしまうだろう。
「……フェイトさん」
 穏やかな口調だった。
 表情こそ能面のままではあったが、温度のある言葉だった。そこに、フェイトは自分の良く知っているキャロを垣間見た気がした。
 そうだ。キャロは、優しい娘だ。辛く鬱屈とした過去を、傷を背負っていても、完全に闇に呑まれてしまうような娘じゃない。身勝手な思い込みと言われようと、フェイトはそう信じていた。信じたかった。自分と、キャロとの絆を。かつて過ごした日々が、決して嘘ではなかったことを。
「そう、ですよね……嫌、ですよね。自分の純血を奪われるよりも、よっぽど。……わかってます。それが、どれだけ辛いことなのか」
「……キャロ、それじゃ――」
「だって」
 安心しかけたフェイトを遮った口調は、強かった。
 白蛇が笑う。それは明るく、朗らかで、邪悪な――笑みだった。
「だって……わたしも、奪われたから。エリオ君を、フェイトさんに。大好きだった人を、大好きだった人に奪われちゃったから。だからわかるんですよ……フェイトさん」
「ひっ!?」
 何かが砕ける音がした。
 今日だけで何度も聞いた音だ。目に見えない、大切な何かがひび割れ、亀裂が走り、砕けていく音。
「……だから、ダーメ……です?」
 禍々しい笑みとともに、キャロの腰が一気に沈む。
「ッ!!」
 エリオの顔色が、変わった。
 フェイトの時間は停まっていた。キャロとエリオが繋がり、愛しい彼の腰が目に見えてビクビクと波打っている様に、意識が霞んだ。
 最初に動きを取り戻したのは、唇だった。けれど、まだ言葉にはならない。ただワナワナとそれこそ動くだけで、意味のある音を発することは出来ずにいた。
 そして、ようやく――
「――ひぃいいい――いい――ぁああああゃ――あああああああああああああああああ――ッッ!!」
 悲泣の叫びが、迸る。
「あぁああああああああああ、あああーーーーっ!! あぁあ、ああああああっ、や、やあ、やあああああああああああああッッ!!」
 人間はこんな声を出すことが出来るのかと、キャロがフェイトに対して抱いた感想はそんな程度のものだった。むしろ、すぐにどうでも良くなった。何故なら今のキャロの中を締めているのは圧倒的な幸福感。これまでの人生において味わったあらゆる感情を凌駕し、洗い流し、今、キャロは幸福の絶頂にいた。









絵:寒天示現流




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