はやてさん恋愛事情




◆    ◆    ◆





「……あかん」
 痛む頭を押さえつつ、八神はやてはポツリ呟いた。
 ホテルの一室らしい室内は、ベッドを始め、少ない調度品の類にもまったく見覚えがなかった。何も身に纏っていない己の素肌と身体の節々に残る感触を顧みれば昨夜の出来事が夢でないのは明白だったが、それでも全てを正しく記憶しているわけではなかった。むしろ覚えていないことの方が多い。
 いっそのこと全て覚えていなければ――などと考えて、はやては苦笑した。
 それならそれで良かったかも知れないが、とは言えそうもいくまい。誤魔化しきる自信はなくはないけれど、誤魔化したくなんてないと考えている自分がこうして居る限りは。
 むしろ、
「それにしても、こないになるまで飲んだんがバレたらシャマルとシグナムに何言われるかわからんなぁ」
 二日酔いで頭を痛めている自分を家族に見られた時の方が怖い。六課立ち上げを志して以来、はやては酒を嗜むようになっていた。始めは管理局のお偉いさん達との顔繋ぎのためだったのが、やがて激務に疲れ切った自分を慰めるためへと変わっていったのはいつ頃からだったか。それでも普段は翌日に残らないよう自制して飲んでいる。忘我するまで飲んだのは本当に久しぶりだ。
 原因は先日の事件。
 事件自体は六課隊員達の活躍もあって被害を最小限に抑えることが出来たのだが、その最小限にさえ上の一部は難色を示してきた。曰く『もっとうまくやれたのではないか』、『本当に最善を尽くしたのか』、『君はエース達を扱いきれていないのではないか』……等々。
 管理局でもトップクラスのエースを複数、他にも様々な分野から有能な人材を強引に引き抜いて六課を設立したはやてを疎ましく思っている派閥は少なくない。華々しい活躍の裏には常に嫌悪すべきくだらない抗争がある。はやては六課長としてその全てに立ち向かい、勝利と敗北を繰り返してきた。
 そして昨夜は……敗北した。
 自分に全く落ち度がなかったかと問われれば、僅かにでも被害が出てしまっている以上とてもそうは言えない。だが、被害を最小限に抑えることが出来たのは自分達六課だったからこそだと、それだけは自信を持って言うことが出来る。命懸けで頑張ってくれた親友や部下達のためにも、そこを譲るわけにはいかなかった。
 が、そこで譲れないのが、若さ……なのだろう。
 はやては苦笑した。
 老獪な連中に抗するには、やはり自分は若すぎる。それが歯痒かった。
 歯痒くて……偶然廊下で鉢合わせたかねてから尊敬する上司――階級的には既にはやての方が上なのだが、はやて自身は彼のことを未だ自分の上司であり師匠であると考えている――ゲンヤ・ナカジマと馴染みの居酒屋にくり出して、酒に飲まれるままに洗いざらい愚痴をぶちまけた。
 ゲンヤは一見気難しげで、さらに皮肉屋な面もあるため若い士官達には苦手にしている者達も多かったが、その面倒見の良さや豊富な経験からくる的確な助言などからはやてのように慕っている若手も多い。
 昨夜もはやてはあくまで相談に乗ってもらうだけ、のつもりだった。なのに酒が入った途端、自分で思っていたよりも日頃の鬱憤が溜まっていたのかついつい爆発してしまった。
 自分の言い分や考えを欠片も理解しようとせず真っ向から否定してくる連中への悔しさと、そういった連中を言い負かすことも上手にあしらうことも出来ない自分への歯痒さ。はやてが鬱憤を吐き出すたびに、ゲンヤは『ああ、そうだな』、『いや、そいつは違う』と真摯に応え、いつものように助言まで与えてくれて――そんな彼の誠実さと優しさが本当に嬉しくて、最終的には彼に泣きつき、そして気がつけば……こうなっていた。
 シャワールームの方から聞こえてくる水音に、はやては彼の所在を確認するように小さく頷くと、天井を見上げて呟いた。
「……ほんま、まいったなぁ。スバルになんて言おう」
 異性に肌を許したのは、初めてだった。
 なのにまったく嫌な感じがしないのは、やはりどこかでこうなることを望んでいた自分がいたからだろう。故に気になったのは自分のことではなく、ゲンヤの実の娘であり自分の部下である六課隊員、スバル・ナカジマの事だった。
 上司部下の関係ではあるが、普段それ程話す機会も無いのではやてはスバル個人についてはさほど詳しく知っているとは言い難い。彼女の一本気な性格が斯様な女の不貞をどう捉えるか、正直想像がつかなかった。
 もっとも、ゲンヤの反応如何でははやては今回の件は自分の胸にしまい込み、無かったことにしなければならないとは思っている。
 ゲンヤからしてみれば、昨夜のことは酔った元部下に噛みつかれたまったく不本意な事件だったと、ただそれだけの事かも知れない。なのに誤魔化したくないから、忘れたくないからと我が儘を言って彼を困らせたくはなかった。
 困らせたくないと思いながら胸に痛みを走らせるその感情を果たしてどう呼ぶべきか、はやては知らない。
 かねてから彼に抱いていた親愛の情について、何度か考えてみたことはある。しかしそれが世間様で言うところの恋だとか愛だとか呼ばれているものなのかは、わからなかった。何しろ恋なんてしたことがなかったのだから。
「はは……かっこわるぅ」
 知らず、頬を一筋の雫が流れていた。
 本当に格好悪い。八神家の主として、機動六課の長として、いつも気を張っている自分はどこに行ってしまったのだろう。
 行方不明の自分を探すかのようにはやては虚空に手を彷徨わせ、ベッドに倒れ込んだ。
 水音は、いつの間にか止んでいた。
 今にもシャワールームのドアを開けてゲンヤが出てくるはずだ。
 怖かった。
 でも、僅かに期待している自分もいた。
「バカやなぁ……ほんま、バカや」
 淡い期待に縋ろうとしている自分を嘲り、はやては笑った。こんな小娘、迷惑に決まっている。
 ガチャリ、とドアが開く音がした。
 はやては堪えきれずにギュッと両眼を閉じてしまっていた。いっそ寝たふりを決め込もうかとも思った。
 足音が近付いてくる。
 頬を、再び一筋の雫が伝う。
 早鐘のような己の鼓動を抑え付けようと、はやては必死になっていた。
 足音はすぐ近くで止まっていた。手を伸ばせば届く場所に、知った気配があった。
 寝たふりなんてとうにバレてしまっているのではないかと考えながらも、はやてはまだ起きあがる勇気を持てないでいた。なのに、そんなはやてをまるで待っているかのように、ゲンヤの気配は微動だにせず佇んでいる。
 どうしようもなく息苦しかった。
 いっそ感情のままに全てをぶちまけて泣き叫んでしまおうかとさえ思った。そうすれば、楽になれるような気がしたから。
(それがほんまなら、なんぼかええんやろけど)
 どれだけの間そうしていただろう。
 ついに耐えきれなくなったはやては、薄目を開けてベッドの脇に立つ彼の様子を眺めてみた。
 足下から、ゆっくりと視線を上に流していく。ヨレヨレのくたびれたYシャツに目がとまった瞬間、何故だか無性に笑みがこぼれそうになった。アイロンかけてあげたいなぁと、自然そんな考えが頭を過ぎっていた。
 流石にザフィーラ程ではないけれど、がっしりとした逞しい体躯に頬が熱くなる。
 そうして――
「ッ」
 目と、目が、合ってしまった。
 声まで漏らしてしまった以上、自分が起きているのは完全にバレてしまっているだろう。
 はやては観念したように小さく頭を振ると、ゆっくりと起き上がった。ゲンヤは何も言わない。言い倦ねているのかも知れない。……それも当然か。成り行きとは言え、あろう事か自分の娘達と大して歳の変わらぬはやてと関係を持ってしまったのだから。
 もう、覚悟は出来ていた。少なくとも、はやてはそのつもりだった。
 なのに、
「……すまん」
 ゲンヤの口から漏れ出た言葉は、どんな強力な魔法よりも鋭く、激しく、はやてを打ちのめしていた。
 打ちのめされた心が訴えてくる。自分の、偽り無い気持ちを。
 好きだった。
 切なくて、苦しくて、どうしようもないくらい、八神はやてはゲンヤ・ナカジマの事が好きだったのだと。
 それは師を敬愛するのでも、年上の男性に亡き父を重ね合わせているのでも無く、純粋に、ひたすら純粋に――相手を愛しいと思う、感情だった。
 これが恋なんだと、今、はやては正しく理解していた。
 だから悲しい。胸が張り裂けそうだった。その張り裂けそうな胸を無理矢理に抑え込んで、はやては、精一杯の微笑みを浮かべた。なるべく、ぎこちなくないように。自然に、いつも通りの自分を演じようと。
「そんな、謝らんでくださいナカジマ三佐」
 ニコリと、本心とはかけ離れた笑顔。
 機動六課を率いる部隊長としていつしか浮かべるようになった笑顔。シグナムやシャマルが心配そうな目で見つめてくる笑顔。ヴィータが『はやてのその顔、あたし、あんまし好きじゃない』と呟いた、笑顔で――
「わたしは……わたしは、気にして、ません、から」
 所々噛みそうになった。でも、言えた。笑って言えた。
 後は……こちらから謝るだけだ。悪いのはどう考えても自分なのだから。
 笑みを貼り付けたまま、はやては頭を下げようとした。これ以上、ゲンヤに今の顔を見られたくなかった。このままではどんどん惨めになっていくだけだ。
 それなのに――
「……え?」
 下げようとした頭が、逞しく温かな胸板に抱き寄せられていた。
「ナカジマ……三佐?」
 何が起こったのか、はやてはゲンヤを見上げようと身をよじった。けれど存外に強い力で固定されているらしく、上手く上を向くことが出来ない。
「あー、いや、その、なんだ。……すまん、ってのは、違うんだ」
 頭上から聞こえてきた言葉は、しどろもどろで、常のゲンヤとはまるで調子が違っていた。
「違う、と言うかだな。昨夜のことは、どっちが悪かったとかじゃなく……ああ、いや、俺が悪かったんだが、その……だなぁ」
 そこまで言って、ゲンヤはコホンと小さく咳払いをした。
「……八神」
「は、はいっ」
 緊張して、妙に尻上がりな発音の返事になってしまった。が、ゲンヤが言いたいのはどうやらこれからが本番らしい。抱きしめられたままのはやては、無論そのまま聞いているしかない。
「うちには、娘が二人いる」
「はぁ……はい、知ってます」
 姉のギンガ、妹のスバル。
 二人ともとても良い子達だ。特に、未熟だのまだまだ甘いだの何だかんだ言いつつも、ヴィータはスバルのことを大分気に入っているようだった。
「お前さんのとこは……その、四人だったか」
「そう、ですね」
 娘ではなくこちらは姉妹のようなものだが――シグナム、シャマル、ヴィータ、リインフォースU。……ザフィーラのことが除外されているようだけれど、致し方あるまい。彼が人間形態をとれることを知っている者は管理局でも限られている。人間形態が基本形となると部隊で保有できる魔導師の総ランクなどに抵触するため、ザフィーラには悪いと思いつつ彼は“人間にも変身可能な動物型使い魔”として届け出てあったりする。そういった事情から普段は狼形態でいるのがほとんどなため事情を知らない人間からは完全な動物型使い魔と思われているのだ。
 と、そんな事情はさておき。
「さて、どうしたもんか」
 溜息混じりに、ゲンヤは呟いていた。
 はやては彼が何を言わんとしているのかわからず、胸の中でキョトンとしている。何故こんな時に互いの家族構成についてなんて持ち出してきたのだろう。
「あの……」
「ん?」
「どうしたもんか、言うのは、一体……」
 恐る恐る問うてみたはやてに、ゲンヤは注意していなければ危うく聞き漏らしてしまいそうなくらい小さな声で答えた。
「いや、娘達に反対されたら、どう説得したもんかと、だな」
 その言葉の意味を正確に掴むべく、はやては何度も頭の中で反芻してみた。
 ……わからない。
 機動六課部隊長として、時空管理局内外に知謀を馳せた八神はやての頭脳は、今や混乱の極みにあった。
「何せ合わせて六人だからな。全員に反対されたりすると、流石に骨が折れ――」
「ちょっ、ちょお待ってください!」
「どうした?」
「ナカジマ三佐、何を言うてはるんですか?」
 はやて的には、まったく至極当然の疑問だった。娘達が反対? シグナム達も反対? 何を反対するのだろう? 昨夜の件がバレでもしたら確かにシグナム達はゲンヤに対し烈火の如くに猛り狂いかねないし、スバル達も所謂「お父さん、不潔……最低」といった感じになるかも知れないが、反対というのがどうにも思い浮かばず、腑に落ちない。
 抱き締めた胸の中で「?」顔をしているはやてを見下ろし、ゲンヤもようやく自分の言葉が相手とすれ違っている事に気がついた。……となると、こちらも非常に恥ずかしい。だが一方でゲンヤは唐突に感じた懐かしさに相貌を崩していた。
 今から二十年も昔のこと。亡妻にプロポーズした時も、確か彼女はこんな顔をしていたのではなかったか。そう言えば娘達もそろそろ年頃だというのに浮いた話の一つもなさそうで、もしかすると女性の魔導師というのはこの手の話にはものすごく鈍いのかも知れない。しかしゲンヤもはやての事ばかり一方的に鈍いと笑ってもいられないだろう。
 昨夜、酔った彼女に抱きつかれ、告白紛いの言葉を投げかけられ、流されるままに一夜を共にしてなお――それでもゲンヤは迷っていた。娘達とさして歳も変わらぬはやてに対し、自分が抱いている感情の正体が果たしてなんであるのか、悩みに悩み抜いた。
 けれど夜が明け、隣で眠るはやての顔を見た瞬間、それまでの懊悩が嘘のように至極あっさりと気付いたのだ。自分が、彼女のことをどう見ているのか。
「ク、クック」
 喉の奥を震わせて低く笑うゲンヤを、はやては不安と疑問の入り交じった表情で見上げていた。そんなはやての心を包み込むように、ゲンヤは今一度、優しく腕に力を込めた。
「あ……っ」
 ゆっくりと、互いの温度が溶け合っていく。
 まるで幼い頃、父親に抱っこされた時のような感覚にはやては頬を弛めた。けれども父親に向けるのとは明らかに異なる感情が止め処なく湧き上がってくる。
「……ナカジマ三佐」
「ああ」
「ええんですか? ……こないに温かいと、わたし、勘違いしてしまいますよ?」
「かまわねーよ。もっとも、勘違いじゃねぇんだがな」
 怖ず怖ずと、はやての両腕がゲンヤの背に回された。まだ少し控えめに、抱き返す力も弱々しい。
「もし、責任とろうとかそういうんなら別に――」
「ったく、馬鹿野郎。誰が責任なんぞで女の一生背負い込もうとするかよ」
 頬に朱が散り、熱に浮かされたように頭がぽぉーっとする。それと反比例するように、腕には力と想いがこもっていく。
 もうはやては無理に上を、ゲンヤの顔を見上げようとはしなかった。ゲンヤの胸に頭を預け、ただ彼の声に耳を傾け、温度を感じていたかった。ただそれだけで、なんて心地よく安心できるのだろう。
 どのくらい互いに黙って抱き合っていたのか、やがてゲンヤは照れながら、ボソリと呟いた。
「今度の休みの日にでも、挨拶に行かねぇとなぁ」
「挨拶、ですか?」
「お前さんの、家族達に。……はやてさんを嫁にください、ってな」
 はやての頬を、幾筋もの雫が伝い落ちていた。それはさっきまでの悲しみに満ちた涙ではなく、喜びの証明だった。大好きな人を、愛し、愛される幸福に、はやてはただ滂沱した。
 が、そこで一つ、大切なことに気がついた。
 はやては少しだけ意地悪そうにクスクスと微笑むと、ゲンヤの腕からそっと逃れた。今度はゲンヤもそれを押し止めようとはしない。
「でもナカジマ三佐、おかしいやないですか」
「ん? なにがだ?」
 不思議そうなゲンヤに、はやては小さく囁いた。
「……だって、家族に挨拶も何も、その前にまずわたしにきちんと申し込んで貰わんと」
 それを聞いてゲンヤがグッと言葉に詰まる。師匠と崇め、尊敬する上官だった彼がこんなにも赤面し狼狽しているのがはやてにはとても新鮮で、たまらなく嬉しかった。
「そ、それはお前……なぁ? 今更わざわざ言葉にしねぇでも……」
「ダーメですぅ。ちゃんと言ってもらわな」
 きっとその一言で、最後に残った不安も跡形もなく消し飛んでくれると思うから。
「……お願いします、ナカジマさ――……ゲンヤ、さん」
 初めて、だろうか。はやてにそう名を呼ばれ、ゲンヤは観念したかのようにフッと嘆息した。
 照れくさそうに頬を掻いてから、ゲンヤはいつになく真剣な表情で、真っ直ぐにはやてを見つめた。はやても同様に、まばたきもせずゲンヤからの言葉を待っている。一瞬、ほんの一瞬娘達と亡妻の顔が胸を過ぎったが、きっと彼女達も許し、認めてくれるだろう。決して自分の身勝手を正当化したいからではなく、彼女が――八神はやてという女性が相手なのだから。
「八神はやて、さん」
「はい」
「俺と、結婚していただけますか?」
 涙でぐしょぐしょになった顔に満面の笑みを浮かべ、はやては勢いよく頷いた。もう、不安なんて無い。迷う事なんて何も無い。
「こんな、こんなわたしで、よければ……――貴方の、お嫁さんにしてください――!」
 そのまま、再び愛する人の胸の中へと飛び込んでいく。
 しゃくり上げながら、はやては、何度も、何度も自分の幸せを噛みしめていた。





◆    ◆    ◆





 その日、スバル・ナカジマは珍しく食堂で一人昼食をとっていた。メニューはBランチ。食器の上にはエビフライをメインにバランスのとれたおかずが並んでいる。
 いつもなら同期の三人や通信士のシャリオ・フィニーノらと一緒に食べるのだが、今日に限ってみんながみんな私用で時間が合わなかったのだ。
 一人で食べるご飯は寂しいなーと、そんな事をぼんやり考えながらエビフライを口に運んでいると、
「……隣、ええかな?」
 不意に声をかけられた。
「あ、はい。いいですよ……って、八神部隊長?」
 正直、驚いていた。はやてが食堂で昼食をとっている姿なんて、今まで見たことがなかったからだ。もっとも自分達とは時間が合わないというだけで彼女も普段からここを利用しているという可能性はあったが、それでも部隊長と肩を並べて食事するというのは変に緊張してしまう。
 ――何か話すべきだろうか?
 そんな風にどうしたものかと悩むスバルの百面相を、はやては優しく見守っていた。六課期待の新人で、有り余る才能を持ちながらそれに自惚れるようなこともなく、常に努力を怠らない、素直で、とても優しい少女。この娘となら、大丈夫。きっとうまくやっていける。
 やがて、意を決したようにはやては口を開いていた。
「なぁなぁ、スバル」
「は、はい。なんですか?」
「……あんなぁ、新しいお義母さん、欲しないかなぁ?」





 ――数日後、機動六課はある噂で持ちきりになるのだが、それはまた別の話である。





〜to be Continued?〜






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